[論説]緑茶輸出額が過去最高 抹茶生産で低迷打破を
農水省によると24年の緑茶輸出額は、1~11月の合計で321億3500万円に上った。前年同期比で24%増え、25年までに312億円としていた政府の輸出目標を前倒しで達成した。うち、抹茶を含む「粉末状緑茶」は239億円と大半を占めた。
抹茶消費を底上げしているのは、甘味を加えて牛乳と組み合わせた抹茶ラテや、スイーツだ。大手コーヒーチェーンで抹茶ラテは、日本に限らず米国でも定番商品になっている。海外では健康志向から抹茶が機能性成分の豊富なスーパーフードとして認知され、抹茶を愛する芸能人やスポーツ選手などが交流サイト(SNS)から日常的に発信。抹茶はいまや流行アイテムになっている。
菓子の原料としても注目度が高い。粉状で使いやすく、チョコレートやナッツなどに負けない風味もある。天然で鮮やかな緑色が出るため見栄えも良く、国内でもインバウンド(訪日外国人)需要が見込める。東京・浅草では抹茶アイスの販売店や茶道体験に外国人が集まり、京都の老舗茶商では高価格帯の抹茶が飛ぶように売れているという。
外国人からは、茶本来のうま味や渋味に加え、茶を入れる手間を含めた伝統文化そのものが評価されている。これを機に日本産茶葉の評価を高めたい。
課題は、国内の振興だ。茶市場の取引は煎茶向けが大半で一番茶価格の低迷が続く。一方で、抹茶の原料となる「碾茶(てんちゃ)」は堅調だ。JA全農京都茶市場の一番茶平均価格は前年の2割高となり「碾茶の引き合いが強かった」(JA全農京都)と話す。
茶の生産は減少傾向にある。急傾斜で作業効率が悪い山間地の茶畑でも、労力に見合う価格が実現すれば営農を続けられる。周囲の防除の影響を受けにくい山間地の強みを生かせば、輸出に有利な有機栽培も可能だ。霧がかかるような産地の景観、農家の物語もブランド化したい。
碾茶増産のネックは、栽培時に覆いをかける資材や労力の負担増と、煎茶とは違う製造施設が必要なことだ。かぶせ茶のノウハウがある鹿児島県では碾茶への転換へ、製造施設の整備が進む。静岡県でも施設が増える動きがある。農水省は今春見直す茶振興の基本方針で、碾茶への転換強化を検討している。支援の一層の充実を求めたい。