[論説]稲の再生二期作 実態把握から始めよう
再生二期作は、稲の収穫後の切り株から出る二番穂を実らせ、もう一度収穫する方法。温暖化に伴う気温上昇で、稲の生育期間が延び、取り組みやすくなっている。1回の生産で2回収穫できるため、増産と農家の所得増が期待されている。
再生二期作で収量を確保するポイントについて、農研機構が2023年に発表した研究成果によると、福岡県内の試験圃場(ほじょう)では、「にじのきらめき」の一、二期作合計で10アール当たり約950キロを収穫した。一番穂を地際から40センチと高く刈ることで地上部に栄養を多く残し、二番穂の生育を促す。加えて、元肥と追肥合わせて窒素成分は10アール当たり計約23キロと、通常の一期作の2、3倍の施肥が必要となる。
産地での導入も広がっている。東海地方では、24年産米で100ヘクタール規模で取り組んだ事例がある。一番穂を早く刈り取った後、田に再び水を入れた場合で、二番穂の収量は同約60キロに上った。24年産は米価が上向いたことで、農家の間で再生二期作に取り組む意欲が高まったという。
島根県の農事組合法人も24年産で1ヘクタールで実践した。収量は二番穂が同192キロで、一番穂と合わせて同762キロを確保した。二番穂の登熟に必要な気温を確保するために、早生品種で取り組むのが有望としており、参考にしたい。
注目したいのは、東日本の主産地でも実践の動きがあることだ。茨城県のJA北つくばは24年産で、約1ヘクタールで実証に乗り出した。「にじのきらめき」の収量は2度の収穫で計712キロに上り、25年産でさらに取り組みを広げるという。実証には大手米卸も参画した。
離農の進行で生産基盤の弱体化が懸念される中で、再生二期作などで「農家の生産性を高めていくことが、米の長期的な安定確保につながる」(米卸)と有望視する。
一方、注意すべき点も見つかった。再生二期作は長期的に見れば地力が落ち、農機の燃料代などコストが増える可能性があると指摘する声も出ている。多発するイネカメムシへの対応も求められる。
各地の実践事例を共有・分析し、安定栽培に向けた知見を積み重ねる必要がある。食味はどうかや、米の全体需給にどれほどの影響があるのかも含め、まずは再生二期作の実態把握から始めよう。