[論説]通常国会が開幕 食料安保へ政策充実を
国会では、予算の審議が最初の焦点になる。政府は、基本法を改正した初動5年間に農業の構造転換を集中的に進めるとし、2025年度予算案にその施策を盛り込んだ。農政を巡る議論は早くから始まりそうだ。
農政には各党とも重きを置き、昨年の臨時国会から論戦が続く。改正基本法の目的である食料安保の確保に、各党とも異論はない。生産基盤を維持するため、生産者の所得増が重要との認識も一致する。ただ、その達成手法に違いがある。政府・与党は、農業の生産性と農産物の付加価値の向上を基本に、農産物の適正な価格形成によって所得増を実現したい考えで、今国会で関連法の提出も目指す。野党は、適正な価格形成を重視する一方、直接支払いの充実と組み合わせて生産者所得をカバーすべきだと提案する。
国会は、衆院で与党が過半数を割り、野党の協力を得なければ予算案も法案も通らない。互いの主張を戦わせながらも、一致点を見いだす努力が必要だ。だが、政策を後退させての妥協になってはならない。食料安保に対する現場の危機感を受け止め、与野党が力を合わせ、より強い政策にしていくよう求めたい。
昨年5月末に改正基本法が成立して以降、食料への不安は高まる一方だ。昨夏は米がスーパーなどの売り場からなくなり、価格が上昇。キャベツなどの野菜も軒並み品薄となり価格が高騰した。生産者にとって再生産できる価格水準になった半面、今後の需給と価格の見通しが付きにくく、不安定さは増している。主食の米でさえ、生産基盤が弱っていることも露呈した。
農産物価格が長年低く抑えられ、生産者に無理を強いてきたと気付く消費者は増えてきた。一方で、家計への負担増から価格上昇を嫌う声もある。これまでになく消費者が、自分の食卓と農業を結び付けて考えるようになっている。この機会に、食料安保の強化へ、改めて国会での徹底討論を期待したい。
政府は3月末までに、改正基本法の理念を具体化する食料・農業・農村基本計画を決める。農政の強化には予算の増額は不可欠だ。25年度予算案で農林水産関係は2兆2706億円と、前年度比20億円増にとどまった。食料安保の強化にはより多くの財政支援が必要だ。与野党がそう声をそろえる国会としてほしい。