[論説]農機のオペレーター 人材採用は視野広げて
集落営農組織は減少が続く。農水省によると2024年は全国で1万3998。17年の1万5136をピークに減少する。メンバーの高齢化などで解散が相次いでいるとみられ、1組織当たりの構成農家数も32・4戸と、ここ20年で2割ほど減った。
組織の弱体化と相まって増えるのが荒廃農地だ。23年度は国内で25万6700ヘクタールと、佐賀県の面積(約24万ヘクタール)を上回った。荒廃農地は4年ぶりに前年度を1・4%(3500ヘクタール)上回り、国内の農地面積(430万ヘクタール)の約6%に相当し、食料安全保障の土台は揺らいでいる。
地域農業の存続・維持には、担い手と農地の確保が急務だ。農地を集約して規模拡大が進めば、農機を扱うオペレーターの確保は不可欠。だが、例えば大分県による集落営農の経営に関する調査によると、人材不足の中でも特にオペレーターが足りていない。
機械を使わない作業では、スマホのバイトアプリで確保できる場合もある。だが農業に不可欠な、大型特殊免許が必要な農機やフォークリフトなどを扱える人員の確保は容易ではない。
こうした課題を解決しようとJA全農ふくれんが始めた取り組みに着目したい。運転好きな大学生に農機オペレーターとして働いてもらう仕組みで、学生時代や卒業後、空き時間を活用して、農機による収穫作業などを担ってもらう。大型特殊免許の取得がハードルになるが、公道を走らず圃場(ほじょう)の運転だけなら免許は必要ないことに着目した。事故を防ぐため、事前に座学で農機の構造などを研修し、請負会社が労災保険などをかけている。
JAふくおか八女管内の集落営農組織は、管内の施設園芸農家にオペレーターを依頼。JAが就農を支援した施設園芸農家に声をかけ、空き時間に大型農機を使った作業を有償で担う。オペレーターの確保に加え、園芸農家の副収入にもつながるだけに、こうした事例を広げたい。
次作に向けた集落座談会が始まっている。オペレーター確保で悩む組織は多いだろうが、視野を広げると意外なところに適任者がいるかもしれない。都市で暮らしていても、農業・農村に関心を持つ学生は多い。若者の力は集落営農に活気をもたらす。農業の担い手だけでなく、支援者を増やす政策も必要だ。