[論説]野菜高騰の裏側 「100円の壁」見直し必ず
野菜の需給バランスが乱れ、価格高騰が長期化する裏には、カット野菜の需要増がある。象徴となるのが、千切りキャベツだ。一時は1玉1000円と騒がれるほど店頭価格が高騰した一方、千切りキャベツは1袋100円前後で据え置きが続く。中には「野菜高騰中!こんな時はカット野菜を」とPRする店内広告(POP)もあった。
だが、消費者にとって家計に優しい価格の維持が、一層の逼迫を招いていることに着目すべきだ。キャベツは猛暑などの影響で出荷量が落ち込み、相場が上昇、店頭価格も連動した。このためスーパーは、固定価格で割安なカット野菜を売り込もうと、業者への商品発注を拡大。立場上、応えざるを得ない業者もあり、目先の数量を確保しようと、産地に対し、収穫の時期ではない小玉の先出しを依頼。その結果、後に出せる分はなくなり、品薄状態が続いている。
安値取引のしわ寄せは中間業者と産地がかぶることになる。肥料代などが高騰する中で安値を強いられれば、農業経営は窮地に追い込まれる。今こそ「100円の壁」を見直し、適正な価格形成につなげる必要がある。
負の循環からどう抜け出したらいいのか。石川県立大学の小林茂典名誉教授は、二つの考え方を示す。一つはベースの底上げ。物流、資材、労務など商品製造のコスト上昇分を販売価格に反映することだ。政府は今通常国会に、生産コストを考慮した農産物の価格形成に向けた法案の提出を予定している。「98円のカット野菜の価格も、10円上がれば大きく違う」(業者)という声もあり、法改正を検討する際には、カット野菜も加えてほしい。
二つ目は、緊急措置として原料の需給や相場に応じて価格を見直す「変動価格」への移行だ。大手のサラダクラブは、キャベツが主原料の商品を対象に、期間限定で相場高騰分を価格に反映すると発表した。こうした柔軟な措置が広がることを期待したい。
まずは、産地にとって負担を強いるような発注をやめることだ。小林氏は「特定の企業や生産者に負担がかかれば、取引は続かない。契約に取り組む農家が疲弊し、離脱が加速する」と指摘する。
小売りの協力と消費者の理解を促し、適正価格の実現へ商慣習の見直しを急ぎたい。