[論説]多収大豆シリーズ 実需と結び付き普及を
そらシリーズは、東北南部から北陸向けの「そらひびき」、関東から近畿向けの「そらみずき」、東海から九州北部向けの「そらたかく」、東海から九州向けの「そらみのり」の4品種あり、本州全域をほぼカバーでき、各地で実証栽培が進められている。農研機構は、長らく低収に甘んじてきた国産大豆の多収化への「第一歩」と位置付ける。
日本の大豆収量は極めて低い。国連食糧農業機関(FAO)の調べでは、2019~23年の平均値で、日本の10アール当たり収量は161キロ。世界平均の275キロの6割にとどまり、米国の337キロの半分に満たない。2000年代以降、米国やブラジルなどで増収が続いているのに対し、日本は徐々に減り、水をあけられている。
こうした中、そらシリーズは、日本の品種と多収の米国品種を交配し、収量重視で選抜。19年から現地実証を始めている。さやがはじけにくい特徴を持ち、収穫時のロスが少ない。実証栽培に取り組んだ生産者からは収量増という大きな魅力に加え、従来品種よりも収穫時期にゆとりが持てることなどから、おおむね評価する声が多い。
一方、品質面では、品種によって異なるが、粒は既存品種に比べ、並み~小さい。色は黄系が多い。豆腐の原料として利用可能とされ、試験レベルでは一定の評価があるものの、食品メーカーでの本格的な利用は道半ばだ。
全農が実需者と協力して行った加工試験でも、おおむね使えるとの評価の一方で、粒が小さく豆乳の歩留まりの低下を心配する声や、みそ造りの過程で粒ぞろいのばらつきから煮えむらが出る可能性などが指摘された。本格的な生産・利用拡大に向けては、収穫後の選別や調製作業を含め、実需者とタッグを組んで進めていく必要がある。
農水省によると、23年の食品用の大豆需要量は103万トン。このうち78万トン(76%)を米国をはじめ海外からの輸入に頼り、国産は25万トン(24%)にとどまる。
政府は30年に大豆の生産を34万トンに増やす目標を掲げる。新年度予算などで、多収品種に切り替える産地や、国産大豆の利用拡大に取り組む食品メーカーを支援する方針だ。品種の普及ありきではなく、流通・消費対策も合わせて講じ、着実に国産への切り替えを進めてほしい。