[論説]相次ぐ山火事 態勢強化し命を守ろう
県によると、同市で26日に発生した山火事の焼損面積は1200ヘクタール以上となり、少なくとも84棟の建物が延焼、男性とみられる焼死体も見つかった。総務省消防庁によると、同市での山林火災は、平成以降、最大の焼損面積となった。被害は今後も広がる恐れがあり、同市は1755世帯4263人に避難指示を出した。14年前の東日本大震災で甚大な被害を受けた地域だけに、市民は再び避難生活を余儀なくされている。
同市に本店のあるJAおおふなとは、生産者の安否や被害の全容を把握しようと対応している。避難指示が出ている地域では、ATM(現金自動預払機)や倉庫などJAの施設があるが、被害状況の把握はできていないという。山火事が続く地域では、タマネギや菌床シイタケなどの栽培を営んでいるという。
山林火災の約7割は1月から5月に集中する。2022年までの過去5年の年間平均出火件数は1292件。焼損面積は計657ヘクタールに上り、被害額は2億3900万円となった。発火の原因は、たき火が32・5%と最も多く、次いで山への火入れが18・9%、放火(疑い含む)7・6%、たばこ4・6%と続く。いずれも人為的な理由で、こうした原因を徹底的に取り除くことが重要となる。
同庁は、枯れ草などのある場所でたき火をしない、火気の使用中はその場を離れず使用後は完全に消火する、火入れをする場合は、許可を必ず受ける――などの注意を促す。農地や原野、田畑の枯れ草の野焼きを行う場合も、事前に自治体に申請するか、地元の消防署に連絡してほしい。
昨年1月には、たき火の不始末で広島県江田島市で民有林242・6ヘクタールが焼損、同4月にはシイタケの乾燥機から出火し、岩手県宮古市で民有林186・6ヘクタールが焼けた。住民の命と財産、地球温暖化を防ぐ森林を守るために、今一度、地域を挙げて火気厳禁を徹底しよう。
消火に当たる人員の先細りも課題だ。地域に欠かせない消防団員は年々減り続けている。消防庁によると、消防団員は全国で76万2670人(23年)と50歳以上が3割を占める。地域防災を考えれば、女性や移住者、外国人など多様な担い手を確保し、市町村や県域を超えて広範に連携するなど、命と暮らしを守る態勢を強化する必要がある。