[論説]女性活躍の推進 学びとつながり支援を
農水省によると、2024年で基幹的農業従事者に占める女性の割合は約4割。女性が経営に参画した経営体は、農産物販売金額が伸びるとのデータもある。農業所得の向上や地域経済の活性化が期待される。それにもかかわらず、女性が経営に携わる割合は約3割、認定農業者に占める女性の割合は5%にとどまる。貴重な担い手でありながら、主体的に活動できていない状況がうかがえる。
大手農機メーカー・クボタの24年調査で、女性農業経営者が直面した壁で最も多かった回答は「農業者としてのキャリアに自信がなかった」だった。「栽培技術や経営の知識を得る機会や場がなかった」も上位を占め、教育を受ける機会の少なさが自信のなさにつながっているとみられる。実際、現場でも「生産部会などの勉強会は男性ばかりで質問しにくい」「参加案内は夫の名前で届くから出席できない」との声が上がる。男性だけでなく、女性が対等に参画できる環境整備が急務だ。
昨年は、同省が手がける「農業女子プロジェクト」の一環で、大阪府内で初の女性農業者交流会が開かれ、多彩な経営内容が発表された。羽曳野市の川崎佑子さんは、消費者や取引相手を農業ボランティアとして受け入れ、農作業を手伝ってもらいながら土や自然に触れる喜びを分かち合う。能勢町の西河沙希さんは野菜の袋詰めや販売で「農福連携」を実現、茨木市の中井優紀さんは伝統野菜の栽培に取り組み、仲間と存続に意欲を見せる。多様な視点から農業の魅力を発信し、課題解決の道筋を探る。都市近郊の小規模経営が生き残る策として、地域を巻き込んで農業のファンづくりをしているのが特徴だ。ネットではなく、リアルに悩みを打ち明けたりアドバイスをしたり、農業振興のアイデアを出し合ったりする場は貴重だ。こうしたつながり合う場づくりを各農政局単位や、JA単位で広げたい。
女性向けの営農研修会を開くJAも相次いでいる。男性に気を使うことなく「疑問をぶつけられた」「女性同士で意見交換できた」などと好評という。学び、つながる場を増やすことが、女性活躍に向けた一歩となる。
「女のくせに」「女だから」というしがらみや思い込みを捨てることも大切な要素となる。農に携わる人が多様化すれば、変化が生まれる。