国際女性デーに合わせ、日本農業新聞「農家の特報班」が、農業・農村で女性が活躍するための課題などを尋ねたところ、農業経営や組織運営に女性が「積極的に参画した方が良い」との回答は9割以上を占めた。女性が参画することで農業経営に変化がもたらされることに期待する声は多い。一方、課題も多く挙がった。女性からは「意見が軽視される」「新しい提案にも否定的」「家事・育児は母親がやるという意識が強い」といった意見が相次いだ。
男性は農業経営や組織運営、女性は農作業に家事、育児──。農村にはこんな役割分担意識が根強く残り、女性の意欲的な経営参画を阻害している現状がうかがえる。
ただ、変化の兆しもある。「女性の意見を聞く耳も必要」「特に育児で(これまでの)価値観を変えるべきだ」と、男性側にも意識変革が必要と考える声が寄せられた。
「私なんて無理」と後ずさりしてしまう女性側の意識も変える必要がある。女性は、農業経営や組織運営に関わる機会が男性と比べて少ない。このため、積極的に参画できない理由のトップが「知識と経験に自信がない」だった。
男性と対等に活躍する女性農業者の多くは「勇気を持って一歩踏み出してほしい」と助言する。このままの状態が続けば子どもや孫の世代まで、ジェンダーギャップで苦しむことになり、農村から都会への若い女性の流出は止まらないだろう。その結果、農業農村はさらに疲弊し、自治体の消滅につながる。
現状打破へ、まずは仲間と声を上げてほしい。研修などに出向いて研さんを積めるよう周囲の理解も不可欠だ。夫妻の場合、夫は家事・育児を公平に分担し、周囲は温かく支え、送り出してほしい。
JAなどの組織は、役員や管理職は男性が多くなりがちだが、女性が加わることで新たな発想が生まれ、事業の発展や職場環境の向上につながる。トップは意欲的な女性を積極的に登用していく方針を示し、実践してほしい。
意欲的な女性が地域で孤立することなく、あらゆる場面で活躍できる環境を整えたい。地域の中核農家やJAが培ってきた経験や情報は、農業を志す多様な人材にも共有してほしい。違いこそ強みだ。担い手不足の中、性別や年齢などの違いを超え、広く受け入れていく必要がある。