[論説]国産ブロッコリー増産 価格安定へ需要開拓を
指定野菜は、生活に欠かせない重要野菜の流通を安定させるため、農水省が指定している。指定品目は14あり、ブロッコリーはジャガイモ以来、52年ぶりの追加となる。
同省によると、2023年のブロッコリー作付面積は1万7300ヘクタールで、ここ10年で23%増と、他の指定野菜と比べても伸びが顕著だ。健康志向に応える機能性と幅広い料理に使える利便性があり、人気を獲得。かつてスーパーの生鮮売り場に並んでいた輸入品はほぼ見かけなくなり、国産が棚を取り返した。存在感の高まりを考えると、指定野菜への追加は妥当であり、需要拡大が急務となる。
堅調相場が続く中、課題もある。ここ1、2年は天候不順による品薄で推移するが、以前は供給過多となり、値崩れを起こす局面もあった。「時期によって販売が苦しく、作付けはむしろ抑えている」(西日本のJA)という産地もある。増産しても、受け皿となる市場を開拓しないと近い将来、需給バランスが崩れる可能性がある。
開拓すべきは、業務・加工分野だ。ブロッコリーで幅を利かせているのは輸入の冷凍品で、生鮮品の輸入が減る中、冷凍品は円安下でも需要は増えている。一方の国産は、暑さで夏に出荷できる産地が限られ、供給に穴があきやすく、周年の安定供給が求められる。国産シェアを奪還するには夏秋期の対策が不可欠だ。
北海道や長野などでは、加工・業務用の供給を増やす試みが進む。高温対策や機械収穫によるコスト抑制、加工時の歩留まりを考慮した規格の見直し、流通段階での鮮度保持などの課題を克服し、周年の安定供給につなげたい。
冷凍向けも鍵となる。生鮮出荷が難しい場合は冷凍してストックし、出荷量が少ない時期を補う発想だ。静岡県の農業法人アイファームは、今年、冷凍ブロッコリーの自社販売を始めた。畑近くに工場を建て、収穫後すぐに加工できるようにし、鮮度を追求。委託ではなく農家自ら冷凍加工まで担うことでコストを抑え、価格競争力を高めた。
ブロッコリーが指定野菜に加わるまであと1年。増産の機運に応えるためには需要の開拓へ、生産から流通、実需の連携を強化したい。流通業者やJAは生産者と実需者双方のニーズをくみ上げ、国産野菜の流通安定化につなげる必要がある。