トランプ米大統領の方針として話題の「相互関税」。国内での需要が低迷する牛肉について、米国は主要な輸出国です。対米輸出牛肉の関税は少し変則的なものなので、どのような影響があるのか分かりませんが、頭の整理をしておきましょう。
現在の対米輸出牛肉にかかる関税は2段階となっていて、
a) 一定の枠内では、4.4セント/kgの従量税
b) 上記の枠を超えたら26.4%の従価税
という仕組みです。
従量税は大変お得で、単価の高い和牛肉でも1kgに対して6.6円(1ドル150円換算)と無税みたいなものです。これはa)の枠が、米国でのハンバーグ原料のように安価な牛肉を輸入するために設定されている「低関税枠」だからです。
低関税枠は約65千トンとなっていますが、ブラジルなどから大量の輸入があるため、日本が割込む余地は小さく、今年は早々に突破して、対米輸出牛肉の現在の関税率は26.4%となっており、平均的な部分肉単価を6000円/kgとすれば、1584円の関税が課せられます。
ここ数年、低関税枠が早々に消化されてしまうため従価税での輸出がほとんどとなり、対米輸出が頭打ちになっている要因となっています。
一方で、米国から輸入される牛肉関税は対米合意後、徐々に低下し、2025年度は21.6%となり、有名無実となった低関税枠を無視すれば、日本の方が関税率が低く、その差は増すばかりなのです。
なので、低関税枠が大幅に増加しない限り(むしろ、低関税枠は撤廃される可能性もあります)、「相互関税」で米国側の輸入関税が日本並みになるのなら、むしろ、歓迎すべきと言えましょう。
ですから、皆さん、日本の牛肉関係者だけはこう叫ぼうではありませんか!「相互関税賛成!トランプ大統領万歳!」。
元農水省畜産部長
原田英男