[論説]地方で「大農業女子会」 誰もが学べる場作ろう
同省が募集し、登録する「農業女子」は、2025年1月現在で1070人。13年11月の発足時から30倍近く増えた。女性が暮らしや仕事、自然との関わりの中で培った知恵をさまざまな企業・団体の技術やノウハウと結び付け、新たな商品やサービス、情報を広く発信するプロジェクトは、第12期(24年11月~25年10月)に入った。これまで女性が使いやすい農機の開発や、消費者とつながるマルシェ、後進の育成、輸出など多彩な活動を展開してきた。
各地で活躍する農業女子が集まるのが「大農業女子会」で、通常はオンラインでの交流が多い彼女たちが、年1回、対面で語り合う。これまでは同省など東京が会場だったが、3月は兵庫県淡路市で初の地方開催となった。「毎回東京では、遠方から行きづらいとの声もあった。関西で実施したことで、各地から参加しやすい会にしたかった」(同省)という。
当日は兵庫や和歌山、大阪、岡山、徳島など各県から参加者が相次いだ。関東圏から毎回参加するという女性も集まり、交流の輪を広げた。現地で淡路市特産の新タマネギを味わい、循環型農業などを実践する地元企業の農場を視察した後、関係人口づくりをテーマに話し合った。
農村地域にどう人を呼び込み、リピーターになってもらうか。収穫だけではなく栽培管理から携わる援農ツアー、住民と交流する農家民宿やカフェ――続々とアイデアが出てきた。共通するのは、農家だけでなく地元の企業や学校、地域全体を巻き込もうという視点だ。男性と対等な経営者として「農家ばかりが奮闘するのでは続かない。農家も地域も来訪者も皆が満足する展開にするべきだ」と指摘する人もいた。横浜市の蛯原眞由美さんは「刺激を受けた。家を空けるのは大変だったけど、淡路の農業も学べて参加して良かった」と語る。
メンバーの年齢は若手からベテランまで幅広く、農作業の他に家事や育児、介護を抱えている。男性中心の農業分野にあって、こうした会合に参加できない女性もまだ多い。性差を超えて、同じ人間として家事や育児をどう対等に分担するかが、課題だ。
会合で得た学びや刺激を持ち帰り、経営に生かすことは、地域活性化にもつながる。気兼ねなく誰もが学べる場をもっと用意する必要がある。