[論説]基本計画閣議決定へ 食料安保の具体化急げ
新たな基本計画は、食料自給率の目標だけでなく、農地の確保や食料の備蓄、肥料の安定供給など食料安保に関わる数多くの目標を設定した。目標倒れで終われば、基本計画そのものの存在意義も問われかねない。進捗(しんちょく)状況を確認・検証し、適切に政策に反映させる必要がある。特に高齢化で急減する担い手や、農地の維持・確保に向けた対応を強く求めたい。
基本計画に基づく水田政策の見直しや、農産物の適正な価格形成の仕組みといった農業政策の議論も本格化する。
水田政策は2027年度からの見直しに向け、制度の詳細を25年度中に決める方針だ。「水田活用の直接支払交付金(水活)」は、水田を対象とする対策から、田畑を問わず作物ごとに支援する仕組みに見直す。生産現場には、対象が畑に広がることで、支援の水準が現行より下がるのではないかとの懸念も広がる。弱体化が進む国内の農業基盤をどう強化し、担い手を確保するのか。中長期的な視点に立った政策を求めたい。
安心して農村で暮らせる施策も必要だ。農水省は、中山間地域等直接支払制度を拡充する方針。27年度に新設予定の環境直接支払制度は、みどりの食料システム法に基づく仕組みにし、支援の対象や水準を今後、具体化する。国際情勢や気候が不安定化する中、収入減少などに対応した万全なセーフティーネットの構築も喫緊の課題だ。
こうした政策を具現化するには、十分な財源確保が重要となる。衆参の農林水産委員会は基本計画を巡る初の決議を全会一致で採択、食料安保に関わる予算の「別枠」確保を政府に求めた。自民党も食料安保強化本部などの決議で、農地の大区画化、共同利用施設の再編・集約化などを柱に、既存事業とは「別次元」で大規模予算を確保するよう要請。与党内には、予算確保の「5カ年計画」を求める声が強まる。
政府は、防衛費を27年度までの5年間で43兆円、防災・減災対策などを強化する国土強靭(きょうじん)化は26年度以降の5年間で事業規模20兆円超を確保する目標を掲げる。農業・食料安保でも、中期的な予算確保の方針を明確にするべきだ。
予算編成の指針「骨太方針」の策定に向けた議論で具体化を進め、農家が展望を描ける方策を示してほしい。