[論説]25年度都道府県予算 使える事業 関心持って
政府は25~30年度を新基本法の初動5年間と位置付け、農業の構造転換を集中的に進める方針だ。そのためには予算の拡充が不可欠であり、自民党は既存予算とは「別枠」で、予算を確保するよう政府に求めている。都道府県の25年度予算も、新基本法初動の年を象徴し、農業基盤を強くする内容となっているか、見極める必要がある。
日本農業新聞が、都道府県の25年度農林水産関係予算について調査したところ、7割弱が前年度を上回る水準を確保したことが分かった。
中でも目立ったのが、米の安定供給に向けた取り組みだ。温暖化に伴う猛暑もあり、近年は国産米の不足感が強まり、相対取引価格は過去最高水準に上昇する。25年産米の安定供給が求められているだけに、地方独自の細やかな支援が求められる。
具体的には、高温耐性品種の育成や高温対策の技術確立に取り組む県が多かった一方、特徴的だったのは、埼玉県が新設した「イネカメムシ広域防除緊急対策事業」。温暖化で害虫イネカメムシが多発し、斑点米や不稔(ふねん)の被害を引き起こしていることから、効果の高い広域防除を県内各地で実施しようと防除体制の整備を支援する。
地域の農産物の生産・販路を広げ、輸入に奪われたシェア奪還を支援する事業も出てきた。長引く円安の影響で輸入農産物の価格が上がり、国産がシェアを奪い返す好機と捉えたい。長野県では「主要穀類競争力向上推進事業」を新設し、県産需要が高まっている小麦、大豆の本作化や輪作の普及推進に乗り出す。
北海道が力を入れるのは国産飼料のシェア奪還だ。新たに「道外飼料移出推進事業」を始め、飼料販売業者などによるモデル的な道外移出の取り組みを支援する。
政府は、農畜産物の生産コストを考慮した適正な価格形成に向け、関連法の改正案を閣議決定し、今国会に提出した。生産現場の長年の悲願である価格転嫁に向けた環境整備が前進する可能性がある。
所得の低迷、担い手の高齢化で生産基盤の弱体化は進む。新基本法の初動となる25年度を、持続可能な農業に変える好機と捉えたい。生産現場は、国だけでなく、都道府県の独自予算などにもっと関心を持ってほしい。展望が描ける農業へ、必要な事業はしっかり活用しよう。