[論説]需要が高い加工用米 安定供給を「付加価値」に
加工用米は、冷凍米飯や日本酒、みそ、米菓などの原料に使われる。水田活用の直接支払交付金の戦略作物助成として国は10アール当たり2万円を交付。低コスト生産など技術を導入する場合は、追加交付のメニューもある。生産量は近年、増減を繰り返しながら25万トン以上で推移している。
特に伸びしろが大きいのが冷凍米飯だ。コロナ禍で冷凍食品の消費が伸び、23年の冷凍米飯生産量は18万1357トンと、過去最多の水準となった。冷凍食品メーカー大手のニチレイフーズは23年に米飯専用工場を新設し、冷凍米飯の製造能力を高めており、増産を求める声は多い。
課題は安定供給だ。米価上昇を受け、新規需要米の生産を減らし、主食用米を増産する意向が強いためだ。農水省が公表した25年産水田の作付け意向調査(1月末時点)では、19道県が主食用米の作付面積を前年実績よりも増やす意向を示した。一方、加工用米は主産県で軒並み減産傾向となった。
資材高で苦しむ農家の所得向上を考えれば、主食用米の生産にシフトするのは自然の流れで、「加工用米を作ってほしい」と言うだけでは、納得は得られない。加工用米の生産を維持するには、主食用米と遜色ない所得水準を確保することが欠かせない。
注目したいのが北海道だ。加工用米の作付面積は秋田に次ぐ全国2位で、25年産も前年実績と同水準(6800ヘクタール)の確保を目指す。JAグループ北海道の試算によると、24年産の農家手取りは、加工用米が主食用米より3割程度少ない。このギャップを埋めるため、産地交付金を前年から増額する。こうした助成と両輪で取引価格の引き上げに注力する。
ホクレンは「主食用並みの手取りを確保できる価格水準を目指す。その上で取引先の数量ニーズに応えないといけない」と強調する。安定供給できる強みを新たな「付加価値」として実需者に伝え、適正価格への理解を促す。
加工用米は、3カ年以上の複数年で契約を結ぶため、主食用米が安かった時には、生産者にメリットが出た側面もある。国産が需要に応えられず輸入米へと切り替わる、国産シェアの喪失は防ぎたい。
そのためには、実需者と産地が長年築いてきた結び付きを強め、双方が納得できる価格帯を探ってほしい。