[論説]キャベツ高値で輸入増 国産安定供給へ対策を
キャベツ価格は昨秋から上昇し、各地区大手7卸のデータを集計する日農平均価格は1月、日別最高値の1キロ311円を記録、平年(過去5年平均)比の3・9倍に達した。
相場上昇の一因となったのが、千切りなどカット加工業者の市場調達だ。カット野菜業者は不足分を補おうと輸入原料の利用に踏み切り、国産を使っていた外食店での利用も浸透した。その結果、業務用の引き合いが緩んで相場は3月に入って急降下し、直近4月上旬の相場は平年比3割高の水準ながら、年初に比べて落ち着きを見せている。
ここで、生産者の頭をよぎるのが「反動安」の懸念だ。キャベツは高値の年でも低迷する局面がある。価格下落時に一定額を補填(ほてん)する指定野菜価格安定対策事業の生産者補給金は、年間の日農平均価格が24年に次いで高値となった18年から23年まで毎年交付された。価格低迷は生産者の意欲をそぎ、作付け減少に直結する。特に21年は過去5年の年間平均価格が最も落ち込み、翌年から作付面積は右肩下がりとなった。
輸入の定着も懸念材料だ。財務省貿易統計では1、2月のキャベツ輸入量は前年同月比で40倍を超える大幅増となった。需要が安値志向に流れれば輸入増は止まらず、国産の一層の減少を招く。年初、スーパーで見られた「1玉1000円」のような状態を繰り返す可能性がある。
米では価格低迷が長期化し、需要量ぎりぎりで作付けしてきた結果、生産者が減って不足感が強まり、価格上昇に転じた。これと似た構造だ。消費者も不安をあおられる。
こうした中、産地にとって心強いのは「国産を使いたい」という声が外食やカット業者、スーパーから上がっていることだ。国産需要は確かにあり、安定供給へ生産者が余裕ある作付けに踏み出すには実需と「折り合う価格」が必要だ。
資材価格や人件費が上昇する中で、農産物価格と取引量を掛け合わせた販売高が平年を上回らなければ、生産者の利益は出ない。今国会で法案審議が始まった「農産物の価格転嫁がしやすい仕組み」の実効性が問われる。
豊凶の波を抑える技術開発も必要だ。1キロ単価が安くても、冷凍加工と並行してランニングコストを抑えながらキャベツを長期冷蔵保存できる技術開発に期待したい。