[論説]自給率向上の具体策 国産のシェア奪還が鍵
政府は4月に閣議決定した新たな食料・農業・農村基本計画で、食料自給率を現状38%(カロリーベース、2023年度)から30年度に45%まで高める目標を立てた。ただ、どのようにして食料自給率を高めていくか、具体的な道筋はよく見えない。
2000年に策定した最初の基本計画では、当時40%だった食料自給率を45%に引き上げる目標を掲げた。それ以降も基本計画を5年ごとに改定し、自給率を向上する目標を掲げ続けているが、ずっと上げられないでいる。まずはその検証が必要ではないか。
今回は特に食料安全保障の確保が問われており、国内の生産力を維持、高めることが最優先課題となる。2000年に239万人いた基幹的農業従事者は、24年には111万人と半分以下まで減った。農地も同期間で483万ヘクタールから427万ヘクタールに減っている。生産基盤の弱体化に歯止めをかけることは、食料自給率を高める上で大前提となる。
基本計画ではこうした課題の解決に向け、生産性向上へ農業構造の転換を5年間に集中的に進めるとした。農地の大区画化や集約、スマート農業の推進、産地の拠点となる共同利用施設も再編する。国内の生産力を守り、高めるため、農業予算の大幅な上積みは欠かせない。
一方で、食料自給率を実際に高めるには、国内生産の維持・拡大を後押しするだけでなく、最終的に消費に結び付けるところまでを目標に据えたい。求めたいのは、輸入に取られているシェアを国産が奪い返すための支援だ。
農水省は2024年度から「国産野菜シェア奪還プロジェクト」を本格化させた。消費が増えている加工・業務用野菜だが、輸入は3割を占める。周年安定供給が難しいという国産の弱みに輸入が攻め込む構図だ。弱点の克服には、広域的な産地リレーの構築や、冷凍技術の活用などが期待される。また、加工・業務用は価格が家庭用よりも安く、収量の向上や省力化も欠かせない。シェア奪還に取り組む産地と実需への充実した支援を求めたい。
基本計画は、加工・業務用野菜に加え、麦・大豆も国産切り替え量の目標を掲げた。肉も果実も輸入に大きなシェアを取られている。産地の強みを確保しながら、品目ごとに輸入からシェアを奪還し、その積み上げにより、38%にとどまる食料自給率を一段、一段と高めていくべきだ。