

「合掌! 2年1組、いただきます」
2月下旬、同市立大歳小学校の教室に元気な声が響いた。この日の給食は、わかめご飯、地元産野菜のみそ汁、そしてチキンチキンごぼう。「大体同じくらいにしたと思うんだけれど……少ない気がする人おる?」。担任がチキンチキンごぼうを児童の器に盛りながら尋ねた。
配膳は本来、給食係の仕事だが、この日は特別。児童に人気のチキンチキンごぼうは「量の多い、少ないで不満が出る」からだ。
給食に出されるようになったきっかけは、大歳小の栄養教諭(当時)が各家庭にオリジナル料理を募集した1995年ごろだという。応募の一つにチキンチキンごぼうがあり、給食に出すと、教室に「おいしい」の笑顔が広がった。市内の栄養教諭が集まる会議で紹介されると、いつの間にか県内で提供される「定番」となった。
大歳小の献立を作る栄養教諭の大田知子さん(52)は「ゴボウは煮しめにするより揚げた方が食べやすい。独特な香りも、おいしい香りに変わる」と評判の理由を明かす。
15年ほど前に小学生だった長男にせがまれ、作るようになったという団体職員の吉谷由紀恵さん(52)は、「そんな家庭ばかりだと思う。人呼んで『県民愛されグルメ』です」と言った。給食から家庭へ、今ではスーパーの総菜売り場にも並ぶ山口の“ソウルフード”となった。
大歳小では6年生の卒業前最後の給食がある15日、チキンチキンごぼうを出す。「5年後、10年後、『最後の給食はチキンチキンごぼうだったよね』と思い返してほしい」と大田さんは語る。児童の心をつかんだ“鉄板”メニューは、給食が続く限り次代へ受け継がれていく。