

5月中旬、岐阜県羽島市立竹鼻小学校に、食育委員会の児童のアナウンスが響いた。
「県魚」がアユの岐阜県では、日本三大清流の一つ・長良川で夏の風物詩「鵜(う)飼い」が開幕するのに合わせ、県内の多くの自治体で給食にアユが提供される。
県南部に位置し、東に木曽川、西に長良川が流れる羽島市でも、市内の全小・中・義務教育学校計13校にアユの「鵜飼い開き給食」が出された。
鵜飼は首や腹につけた縄でウを操ってアユなどの魚を取らせ、首元にたまったら吐き出させる伝統的な漁法。県内では1300年以上の歴史があるといわれる岐阜市の「長良川鵜飼」と関市の「小瀬鵜飼」が5月11日~10月15日の5カ月間行われる。

この日の献立は、背を開いた体長20センチほどのアユを油でカリッと揚げ、酢やネギを使ったソースをかけた「アユの清流ソースがけ」。竹鼻小を担当する栄養職員の牛嶋愛梨さんによると、骨まで食べてカルシウムを摂取できるようにと考えられた。
給食に出るアユは県内で養殖されたもの。農水省の海面漁業生産統計調査によると、岐阜県は2023年の養殖アユの生産量が900トンで、全国で最も多かった。
羽島市では鵜飼い開き以外でも、毎月のようにアユを使った給食が提供される。6年の安藤有希さん(11)は給食に出るアユの甘露煮も好きで、スーパーでも買うという。井上咲良さん(11)も「アユに甘いソースが絡み合っておいしかった」。
「川魚の独特の風味は苦手な子どももいる」(牛嶋さん)というが、普段から給食でアユを食べる機会が多いからか、竹鼻小の6年生はみな箸が進む。給食の終了を待たず、皿はあっという間に空っぽになった。