

小平第十四小学校の調理室、6月28日朝。大釜にサラダ油とバター、小麦粉を投入して40分炒めると、きつね色のルーが出来上がった。「焦がし過ぎるととろみがなくなり、焦がし足りないと風味が立たない。成功して良かった」。栄養士の武藤洋子さん(48)が言った。献立は同じでも、ルーの作り方や具材は各校に任され、それぞれに味わいがある。
4時間目が終わり、タマネギやピーマン、ナスなど8品目の市内産野菜を煮込んだカレーが各教室に届いた。「いただきます」の声が響き、3年の教室では一早く食べ始めた石川賢二さん(9)が「家のカレーよりスパイシー」と笑った。
江戸時代、現在の東京都新宿区と山梨県をつなぐ青梅街道沿いで新田開発が進み、小平は南北に細長い「短冊型農地」が造営された。都心に近い立地を生かし、市場の動向に合わせた少量多品目の栽培が盛んに行われ、今に引き継がれている。野菜は市内の直売所に並んでおり、多くの市民でにぎわっている。
近年は宅地開発が進み、経営耕地面積は農家の高齢化を背景に10年で1割以上減り、市域の7%ほどになった。一方で、「未来を担う子どもたちに地元産の野菜を食べてほしい」と市、農家、JA東京むさしが連携し、地場産導入の課題だった市内全校への配送体制を整備。給食の市内産導入率は上昇を続け、19年度に小中校で3割を超えた。
カレーを食べ終えた立石彩千慧さん(9)が、様子を見に来た武藤さんに「小平の野菜はどうやって運ばれたんですか」と質問した。武藤さんは「タマネギは農家さん、カボチャは農協さんが持って来てくれました。いろんな人が協力してカレーができたんだね」と語りかけた。
訂正 「立石彩千彗さん」とあったのは、「立石彩千慧さん」の誤りでした。