

衣に大豆油やベーキングパウダーを加え、ふわふわの食感に仕上がったナマズのフリッターが、4時間目を終えた東中学校の教室に届けられた。1年生の平方辰弥さん(12)は、コッペパンにナマズと炒めキャベツを挟み、大きく口を開けた。「臭みが全くなくて、おいしい。ナマズは給食以外で食べないから、今日が楽しみだった」と、満面の笑みだ。
早生米の産地として発展した吉川ではかつて、ナマズは川や農業用水路に生息し、家庭で常食された。ところが高度経済成長期の1960年代、農工業の排水で水環境が汚染。ナマズは姿を消し、一部料亭だけで食べられる高級食材になった。
同市は90年代、衰退したナマズの食文化をシンボルに町おこしを計画。98年には米農家でつくる吉川受託協会が休耕田12アールを活用した養殖に成功し、市内産が出荷されるようになった。2017年から毎年、ナマズを給食で出す同市は今年、7000食分を予算内で確保するためベトナム産ナマズを使用した。
自作のナマズサンドを食べ終えた同校1年の藤江夏希さん(12)が「去年はナマズのパン粉焼きが出た。メニューが毎年変わるから面白い」と言った。
今年のレシピは昨年10月に同市で開かれたナマズ文化を発信する「全国なまずサミット」で入賞したアイデア。同サミットに参加した茨城県行方市は11月、ナマズ揚げ煮を給食に出す予定だ。吉川市長の中原恵人さん(54)が言う。「ナマズを神様として祭る地域もある。忘れ去られたナマズ文化の復活を期待したい。学校給食は、文化復興の土台となる力を秘めている」