こころのミュージカルで若月名誉総長を取り上げるのは昨年に続き、2回目。昨年は、同病院に赴任するまでを中心にまとめた。
脚本・作詞・演出を手がけた奥村達夫さん(69)は「前回描かなかった、佐久に来てからの活躍を中心にした完結編だ」と説明。「私欲とは無縁で、地域のために奮闘する若月医師の姿から、命と地域医療の大切さを感じてほしい」と話す。
佐久市民を中心に7歳から60代までの45人が出演。演出担当を合わせて総勢70人で作り上げた。奥村さんは昨年11月から台本と曲作りを進め、今年9月から週末を中心に稽古を重ねてきた。
若月名誉総長を演じるのは昨年に続き、佐久市立東中学校で音楽を教える熊谷修一さん(40)。熊谷さんは演じる前まで、若月名誉総長のことは名前程度しか知らなかったという。演じる中で「若月さんが農村医療を変えようとひたむきに頑張る姿に、パワフルさとカリスマ性を感じた。そこをしっかり表現したい」と語った。
いつでも、誰でも自由に診察を受けられる--。それが、若月名誉総長の言う「医療の民主化」だ。長野市の青木由里さん(63)は上演後、「医療の民主化を後世に伝える意味で、この舞台はすごく重要。素晴らしかった」と話した。
〈あらすじ〉
2部構成で、上演時間は約2時間。前半は全てを失った関東大震災、東京帝国大学医学部に入学して医局在籍中での満州出兵、帰国後に肺結核を患い生死をさまよう中、妻・次ヱが献身的に看病する姿--など、若月名誉総長が1945年に同病院へ赴任するまでを描いた。
後半は、日本初の農村に出向く巡回検診、病院へ気軽に来てほしいと始めた演劇公演、当時「死の扉を開く」といわれた難病「脊椎カリエス」の手術法を確立する姿を追った。
スクリーンとナレーションでは、日本農村医学会の創設や国際農村医学会議の開催、アジアのノーベル賞といわれるフィリピンの「マグサイサイ賞」受賞など、数々の実践や国際的な評価も紹介した。