研究グループは欧州連合(EU)諸国でGI登録された1085銘柄を調査。このうち、品種や栽培方法、収量、ブレンド比率などの基準を定めている銘柄を、今後の気候変動予測に基づきリスクを評価した。脆弱性は、「とても高い」から「低い」までの各段階に分けた。
脆弱性が「とても高い」銘柄は約5%で、数十年のうちに深刻な悪影響に直面するとした。これらは、気象環境が大きく変化しやすい地域にあり、かつ、産地がその変化に適応できない可能性があるとした。この中には既に、基準を見直すなどの対応を取っている銘柄もある。
脆弱性が「高い」銘柄は約25%。気象変化は大きい地域だが適応しやすい基準を採用していたり、その逆だったりと特徴は分かれる。残りは脆弱性が「並」または「低い」銘柄で約70%ある。
研究グループは、厳格に栽培基準や栽培地域を定めるような方法はいずれ廃れると指摘。ただ、ワインの特徴をなすテロワール(ブドウ畑を取り巻く環境)という歴史的な考え方と、消費者とのつながりは維持したまま、対応策を探る必要があるとしている。
研究成果は国際学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。
(古田島知則)
〈ことば〉地理的表示(GI) ある地域に特有の伝統や文化、技術などが、農産物や食品の特徴に結び付いている場合に、その名称を保護する制度。国家間でGI産品を相互に保護する取り決めもあり、日本側の108産品(2023年12月時点)はEUでも保護される。