農研機構などが開発したフラワーアレンジメントを利用した認知機能の訓練(SFAプログラム)が全国で広がりを見せている。愛知県では、生花店と医療専門学校が連携し、SFAプログラムを実践する。全国規模のフラワーデコレーション団体は、同プログラムの民間資格をつくり、普及に励む。認知機能向上を図るとともに医療や介護の現場で花を使うことの利点を周知し、需要拡大を狙う。
愛知県で花を活用した心身の健康支援活動を行う生花店「ヘルサブルーム」は、名古屋医健スポーツ専門学校と連携し、同プログラムの普及を進める。両者は県内のデイサービスを訪れ、利用者にプログラムを実践する。
連携は2022年度から始めた。同校は、同プログラムを同校の作業療法科2年生の演習に組み込んだ。生徒は、同プログラムの講義を受けた後、同店と県内のデイサービスを訪問し、実践する。また、同店は県産の花を使うことで、認知度向上を狙っている。今までに計5回、デイサービスを訪問している。
同校生徒から指導を受けたデイサービス職員は「認知症が進行し、無表情だった利用者が笑顔を見せた」と効果を話す。生徒は「花を通して交流することで利用者と会話が生まれてより仲が深まる効果もあると感じた。作業療法士になった際には花を取り入れることも考えたい」と話す。
同店の石崎理恵代表は「このプログラムを作業療法士が現場で行えば花の需要の創出につながる。これからも花き業界と福祉業界の橋渡しを担い、花の活用が広がるように尽力したい」と意気込む。
フラワーデコレーションを普及する団体、フラワーデコレーター協会は20年に同プログラムの民間資格「脳トレフラワーアドバイザー」を構築した。同協会によると、有資格者は現在、北海道から沖縄に住む約170人。同アドバイザーは、全国の老人ホームなどに訪問し、実践する。
山口県長門市でフラワーアレンジメント教室や生花店などを営む、フルール縁の末永有紀代表は23年に脳トレフラワーアドバイザーの資格を取得した。同県の福祉関係者らに「お花と脳トレ?!新発見!!認知機能向上のためのアレンジ」と題した講演を展開する。
末永代表は「多くの人に花に触れる合うきっかけを増やしたい。県産花の利用拡大とフラワーロスの低減にもつなげたい」と話す。
同協会の中井健事務局長は「高齢化が進む現在は、加齢に伴い認知機能が低下する人も多い。それらの人たちをアドバイザーが指導し、認知機能の低減や予防ができればうれしい」と強調。コロナ禍以後、花き需要が伸び悩んでいるだけに、「このプログラムで花に興味を持ってもらい、業界全体を盛り上げたい」と力を込める。
(古庄愛樹、前田大介)
<ことば>SFAプログラム
SFAプログラムはフラワーアレンジメントを利用した認知機能の訓練。農研機構と茨城県立医療大学が2018年に開発した。訓練では、吸水スポンジに付けた丸や三角の印に、順番に従って花材を挿し、パズル感覚で繰り返しフラワーアレンジメントを作成する。認知機能の低減予防、頭痛や倦怠(けんたい)感の改善などに効果があるとされる。