全国でアグリスポーツが広がりを見せている。熊本県では農家が農作業とスポーツを組み合わせた様子をエンターテイメント化し、交流サイト(SNS)で発信する。長野県ではスポーツ用品メーカーがアグリスポーツワ-ケーションの実証実験を開始。富山県では日本アグリスポーツ協会が設立された。農業の魅力を伝えるだけでなく、担い手不足解消や、農村に人を呼び込む観光資源にもつなげようとしている。
熊本県八代市の一般社団法人「Fam Lab8(ファムラボエイト)」は、2024年9月に設立。若手・中堅農家9人で構成する。「省力化・担い手確保」「やつしろ農業の魅力アップ」「クリーンな農業」を3本柱に活動する。
メンバーが最も力を入れるのが、農業の魅力向上に向けた「アグリスポーツ」の開催だ。「アグリで世界を面白く」を合言葉に、日頃の農作業を「技術」として提案。イチゴのパック詰めやブロッコリーの機械移植など、メンバーや市職員が速さや達成度を競って楽しむ様子をSNSなどで発信している。
2月中旬には、熊本大学の学生や九州農政局の若手職員を市役所に招き、米の等級検査や品種あてクイズを開催。今月2日には畳の上でイグサのヨガマットを敷いて行う「畳ヨガ」も開いた。
現在、人を招く拠点にしようと、事務所兼農泊の施設として古民家を改装中で、「グローカル・クラウドファンディング」で改装費300万円を募っている(3月末まで)。
林孝憲代表は「農業には『昨日より早く作業ができた』『よりおいしいのが採れた』といった喜びがある。そうした疑似体験を通じ、農業は笑顔が出る楽しいことなんだよと伝えたい」と意気込む。
アシックス
大手スポーツ用品メーカーのアシックス(神戸市)は、長野県飯綱町で農地開発を手掛けるみみずやと連携し、「アグリスポーツワ-ケーション」の実証実験をしている。
首都圏で働く労働者に同町で農作業を体験してもらい、同社のウェアラブル端末でバイタルデータを計測。両社は「アグリスポーツで脳が活性化し、仕事のパフォーマンスの向上につながる」と実証する。
農業の人手不足解消など地域の活性化と企業の健康経営支援を結び付けることで、関係人口の創出も図る。
(柴田真希都)
〈ことば〉「アグリスポーツ」
日頃の農作業の動きを実際に圃場(ほじょう)で体験し、運動と同様の爽快感や健康効果を得てもらう活動のこと。23年には富山県射水市で日本アグリスポーツ協会が誕生した。同市の一部の小学校の教育にも採用されている。