使用済み乾電池(一次電池)は、年間3万4000トン(2021年)が一般廃棄物として捨てられている。1990年代は、微量の水銀や鉛などの有害物質が含まれていた乾電池が広く流通していたため自治体が回収していたが、現在は水銀や鉛がなく、不燃ごみとして処分することが増えた。一方、乾電池には植物の必須栄養素のマンガンや亜鉛が含まれ、資源としての活用が課題になっていた。
パナソニックエナジーは2023年、TOMATECと電池に含まれる亜鉛が肥料に適しているかなどの研究を始め、24年9月にリサイクル技術を確立した。鉱石に比べ、乾電池は成分比が分かる上、既に製品となっているため高純度のマンガンと亜鉛が得られる。
パナソニックエナジービジネス戦略課の小村太郎課長(取材当時)は「大量生産、大量消費の時代は終わった。使用済み電池の活用法を探りたかった」と語る。
乾電池は二酸化マンガンと黒鉛、亜鉛、主に鉄製の端子で構成。同社は、使用済み乾電池から二酸化マンガンと亜鉛を含むブラックマスと呼ばれる粉末を取り出す。TOMATECは作物が吸収しやすいように、粉末を1300度に溶融しガラス化。他の物質と混ぜ、同社のクエン酸溶性肥料の原料とする。
生育も通常と変わらないことから既に製品として流通する。乾電池由来のマンガンと亜鉛を含む肥料は初回で5トンを出荷、うちマンガンと亜鉛が500キロ含まれる。単三電池1本からマンガンや亜鉛を含む約100グラム分の肥料ができるという。
肥料にリサイクルされる乾電池は、スーパーで回収する他、パナソニックエナジーの製造工程で生じたサンプル品などを使う。
TOMATEC無機事業部営業部の岩田直親部長は「下水汚泥由来のリンの肥料化が進む中、乾電池由来の肥料を使った農産物に付加価値が生まれると農家にもメリットがある。リサイクル費用を後押しする仕組みができると実用化がさらに進む」と期待する。
(木村泰之)