独自のCM24万回再生 静岡の植田さん
【静岡・遠州夢咲】丸祐植田製茶(静岡県御前崎市)の「ゲーミング椎茸(しいたけ)」が注目を集めている。植田有裕さん(38)が生産するシイタケで、パッケージにはゲームを意識したイラストを採用。「ゲーミング椎茸」の名で直販してからの売り上げは、約50倍に伸びた。県外の飲食店で使用されるなどに販路を広げており、地元のブランド品にも認定された。
植田さんは、日用雑貨を取り扱う大手販売店に勤務した後、10年ほど前に祖父の代から35年以上続くシイタケ農家を継いだ。安全で安心できるシイタケ生産をモットーに、現在は2万個の菌床ブロックを管理する。
菌床の材料から生産まで純国産にこだわり、無農薬での生産を実践。その実力は折り紙付きで、過去2度、全国サンマッシュ生産協議会の品評会で奨励賞に輝いた。
ゲーム好きの植田さんは、数年前に自身が企画したオンラインゲーム大会の賞品にシイタケを活用することを思いついた。ゲーム仲間内で評判になり、いつしか「ゲーミング椎茸」と呼ばれ、ゲーム業界に浸透した。

話題性と知名度の上昇を受けて、2020年に「ゲーミング椎茸」の名で販売を始めた。ゲームらしさを演出したパッケージやPRにも力が入る。
SNS(交流サイト)で発信するため、人気の対戦型格闘ゲームをオマージュした30秒CMを制作。バターのしょうゆ焼きや特製スパイス焼きなどシイタケのおいしい食べ方を提案する。CMの反響は大きく、これまでの表示回数は24万回を記録した。
ブランディング前と後では、直販の売り上げが約50倍と跳ね上がり、市場出荷以外にもまとまった収入の確保につながった。23年には「ゲーミング椎茸」を商標登録した。
24年度には、同市が認定する「御前崎ブランド」に「御前崎産肉厚椎茸」として選ばれ、地域の新たな特産品としても存在感を高めている。
植田さんは「品質には自信がある。認知度を高め、御前崎市で作られた肉厚シイタケを全国へと広げたい」と意気込む。
シイタケの販売時期は毎年、10月中・下旬~4月下旬まで。庭先直売と通信販売を中心に、市内の道の駅や市内外のスーパーでも販売する。
若者に向け市がゲーム制作
札幌市とゲーム開発を手がけるEasy(東京都)が制作した、農業経営を体験できるゲーム「FARM TYCOON by SAPPORO(ファームタイクーン)」が好評だ。仮想空間(メタバース)で伝統野菜の巨大キャベツ「札幌大球」などを栽培し、農場を拡大。農畜産物の販売や6次化もでき、若者に農業や地産地消の魅力を幅広く発信する。
観光名所の札幌市時計台やさっぽろテレビ塔などを再現した、札幌市がイメージの仮想空間で農業経営を疑似体験する。自身のアバター(分身)を操作し、札幌大球やタマネギ「札幌黄」の生育や収穫、乳牛の飼育などを行う。農畜産物の販売や乳製品工場の建設、野菜を使ったスープカレー屋の立ち上げも可能。経営主となり、農場を拡大していく。
同ゲームは、ユーザー数5億人を誇る人気ゲーム「Fortnite(フォートナイト)」をプラットフォームに制作。利用者層は18~34歳が中心で、若者が主なターゲットだ。利用者が多いフォートナイト内にゲームを作り、素早く大多数に農業をPRする。
ファームタイクーンのプレイ回数は2000回、全利用者の合計プレイ時間は6万分を超えた。札幌市の担当者は「(同市の農業体験施設)さとらんどのキャラクター『ぐんぐん』がアシスタントとして登場するなど、簡単に楽しく遊べるのも魅力。ゲームを通して農業に親しんでほしい」(農政課)と話す。
(関竜之介)

