山梨県大月市の大月のびのびファームは、豚と羊の放牧からソーセージなど加工品の販売まで手掛ける、全国でも珍しいビジネスモデルを構築している。市のふるさと納税返礼品として販売する他、地域の飲食店や支援学校に卸して地産地消にも貢献。農水省によると、羊肉の消費量全体に占める国産の割合は1%未満という。
小学校からの幼なじみである、元県職員で獣医師の條々和実さん(72)と、元銀行員の小泉幹成さん(72)らが、2023年6月に同社を設立した。
同社では、仕入れた豚、羊、馬を最大6カ月ほど肥育し、山梨食肉流通センター(笛吹市)で食肉処理した後、自社で精肉にする体制を敷く。加工品の製造は県内の専門業者に委託している。
同社の強みの一つが豚と羊を放牧で育てていることだ。臭みがなく、適度な運動で引き締まった肉質に仕上がるという。放牧場は300坪(1坪3・3平方メートル)あり、これまでに延べ豚15頭、羊15頭を肥育している。
放牧場の整備に当たっては、條々さんと小泉さんの同級生らが柵を設置したり、イノシシの侵入対策で柵の下に丸太を埋めたりする仕事を手伝った。
解体された肉を精肉にするのは、食肉の処理・加工に30年近く従事し、市の地域おこし協力隊員でもある武川雄一さん(50)だ。廃業した肉屋の設備を借り、作業を行う。
加工品は、馬肉と豚肉を使ったソーセージやサラミなどを開発。全国商工会連合会が主催の審査会で賞をもらうなど、流通関係者からの評価も高い。
同社は、加工品の自社製造やジビエ(野生鳥獣の肉)事業への参入など、幅広い目標を掲げている。條々さんと小泉さんは「実現に向けて後継者を育てたい」と意気込む。
(岸康佑)
