食品にまつわる課題を冷凍で解決する動きが広がってきた。利便性の向上や、新鮮な風味の維持などを実現。日本酒や薬味など冷凍市場に参入する品目も多様化する。今月中旬に開かれた、小売りや外食など向けの展示商談会「スーパーマーケット・トレードショー」から、最新の動向を探った。

日本酒を瓶ごと凍らせる技術を提案するのが、冷凍機械メーカーのテクニカン(横浜市)だ。日本酒のうち、加熱殺菌処理をしていない「生酒」は、搾りたてのフルーティーな風味が楽しめるが、味わいが変わりやすい課題がある。冷凍により、「酒蔵でしか味わえなかった搾りたての魅力がどこでも楽しめるようになる」(同社)とする。
通常、冷凍させると水とアルコールが分離して味が損なわれてしまったり、水分が膨張して瓶が割れたりしてしまうが、同社はマイナス30度のアルコールに瓶ごと漬けて急速に凍らせることでこれらを克服した。品質が安定することで、輸出も可能になるとみる。

加工ワサビメーカーの金印物産(名古屋市)は、ワサビやショウガなどの薬味で、冷凍市場を開拓する。ワサビの場合、すりおろしてから30分ほどで辛味や香りが消えて食べ頃を過ぎてしまうといい、マイナス196度で瞬時に凍結しておいしさを保つ。
チューブ入り商品では、常温でも品質を保てるよう添加物が多く含まれているが、冷凍では大幅に抑えられる利点もある。賞味期限内に使いきれないという課題には、個包装で使い勝手を高めた。原料には国産を使用。同社は「毎回青果をすりおろすのは手間もかかるが、冷凍であれば手軽に素材本来の風味を感じてもらえる」とする。

人手不足に冷凍で対応するのが、青果仲卸業などを手がけるフルックスグループ(奈良県大和郡山市)だ。スーパーの総菜用などとして、店内でそのまま揚げるだけの冷凍天ぷらをアピールする。
天ぷら用にはもともと、スライスした野菜を売り込んでいた。一方、スーパーで総菜の製造に充てられる人員が減少していることから、より完成品に近い形で提案するようにしたところ「需要の伸びを感じている」(同社)という。製粉業者と開発した、冷凍に向く天ぷら粉を使用する。
食関連で国内最大級を誇る同展示会では今回、冷凍に関する食品や技術などの展示を特集し、来場者の関心を集めた。主催した全国スーパーマーケット協会によると、自宅での食事機会が増えた新型コロナウイルス禍で冷凍食品が注目され、「簡便性から冷凍食品の品ぞろえを強化するスーパーが増えている」と指摘。業務用でも人手不足が深刻化する中、「さらなる市場拡大が見込まれる」とみる。
日本冷凍食品協会によると、2023年の冷凍食品の国内生産額は前年比2・1%増の7799億円で、ここ10年では最高を記録している。
(本田恵梨、森井千尋)