国内外食チェーントップクラスの取扱量


代表的な商品の一つに、「抹茶クリームフラペチーノ」(トールサイズ・595円)がある。抹茶にミルクと氷などを混ぜた冷たい飲料で、日本では2002年に発売。鮮やかな黄緑色のドリンクにホイップが乗った唯一無二の商品だ。同社商品本部チームマネージャーの小室康明さんは「日本ならではの抹茶をスターバックス流に解釈した商品で、20年以上たった今も人気商品の一つだ」と話し、新しく斬新な飲み方を提案してきたと振り返る。
一般的にティーは女性が飲む比率が高いが、「抹茶を使用したドリンクは他商品に比べて男性の比率も高く、若年層だけでなく幅広い世代の人が飲んでいる印象」(同)と客層を明かした。

世界で88カ国・地域で約4万店舗を展開する同コーヒーチェーンだが、70以上の国・地域で抹茶を使った商品を提供する。抹茶を使用したドリンクは日本でも根強い人気があるが、米国などでも「フラペチーノ」や「ラテ」などを多様に展開している。スターバックスの米国本社によると「高品質を維持するために、香りの良さや甘味、うま味のある抹茶を厳選している」とこだわりを明かす。昨今、海を越えて広がる抹茶ブームをけん引する。
スターバックスコーヒージャパンではフラペチーノの他、定番商品として「抹茶ティーラテ」も提供。これらに使用する抹茶はミルクと合わせた際の味わいにこだわり、抹茶の苦味や甘味がしっかり残るようにしているという。特に苦味がポイントで、いつでも同じ味わいで楽しんでもらえるように“安定”も重視する。
コーヒーのイメージが強い同社だが、20年からティーに特化した店舗「スターバックスティー&カフェ」を都市圏を中心に18店舗を展開する。
通常店舗よりも本格感と多彩さで差別化する。品質にこだわり、茶の風味の上質感を追求する。また、ニーズに合わせて選択できるバリエーションや新しい飲み方の提案などでティー体験を提供。一部店舗では石臼引きされたより上質な抹茶を使用する。
好調な需要を賄うため、小室さんは「常に抹茶の取引を拡大している状況。市場全体としてニーズの高まりもあり持続的な生産に期待している」と語る。

国際色ある有力企業が、日本伝統の抹茶に価値を感じ、斬新なアイデアを組み合わせて国内外で大きな市場を創出した。
国内の荒茶生産量のうち、抹茶のもとになるてん茶の割合はまだ1割に満たない。荒茶の多くを占めるリーフ茶の価格低迷や需要減退に伴い、茶生産は縮小が続く。抹茶をヒントに、消費者のニーズを生産者も含め業界全体で共有し、需要拡大の芽を見逃さないことが茶の持続可能な生産につながる。
(菅原裕美)

国産に注目する業界や企業の動向など、アグリビジネスの最前線に迫ります。