同県はブリの養殖が盛んで、生産量は鹿児島県に次ぐ全国2位。栄養豊富な豊後水道で育てられ、身が締まって脂ののりが良い「豊の活(いき)ぶり」として、全国に発送されている。
そのブリを、大分県が生産量1位のカボスを混ぜた餌で養殖するのが「かぼすブリ」だ。2010年から始まり、主に臼杵市、津久見市、佐伯市で育てられる。
飲料を作るため、ジェイエイフーズおおいたの工場(杵築市)に運ばれたカボスが原料となる。佐伯市の米水津はまち養殖漁業生産組合では、果汁を搾った後の果皮を仕入れ、水産加工施設で乾燥させ、粉末状にする。専用の船舶の上でイワシなどの餌に混ぜて練り、ペレット状にしてブリに与える。果汁を与える組合もある。

餌やりは、午前5時に始まる。同組合は、カボスの粉末を0・75%添加した餌を、出荷前に30回以上与え、「かぼすブリ」へと成長させる。
一般的なブリは水揚げ後、時間がたつと血合いを中心に変色し、鮮度が落ちる。一方、「かぼすブリ」はかんきつ系の抗酸化作用で変色が抑えられ、鮮度を長く保ち、臭みのないブリになる。刺し身にするとほんのりと香り、ブリしゃぶにするとより香りが強くなる。
船上でカボス粉末を餌に混ぜて与える同組合の鶴野晃平さん(37)は「カボスを混ぜる時は、餌になる魚の種類によって混ぜる水の量を調節する。潮の様子や動きを見ながらやる」という。

同組合は、普通の養殖ブリより1キロ当たり100円高く販売。決して高値ではないが、「鮮魚店からは扱いやすいと好評。消費者の魚離れを防ぐのにも貢献している」とみる。
津久見市のカボス農家・服部和幸さん(59)は「食べるとカボスの味と香りをしっかり感じる。農家生産者として漁業とつながっていることはうれしい」と話す。
農業と漁業が連携し、地域農業の元気が漁業の活性化につながっている。