20代後半で椎間板ヘルニアを患ってからは、腰は内臓を反映するという考え方もあるので、内臓に負担のかからない食事を取るように気を付けたんです。お肉は13年間くらい食べるのをやめていました。その間、たんぱく質はお魚や大豆などで取っていました。
そういう生活をずっと続けましたので、食事についてこれが好きとかあれが好きとか、あんまりないんですよね。なんていうんでしょう、節制し慣れちゃったんでしょうか。
基本的には、食べ過ぎたら調子が戻るまで食べない。そうシンプルに調整しているところがあります。節制していた期間が長いので、食べ過ぎると具合が悪くなるんですよね。あと脂っこいものとかお菓子なども食べなかった期間が長いので、今でもそういうものを食べると調子が悪くなることがあります。
若い時にロシアに踊りに行った時、劇場のゲストハウスみたいなところに泊まっていました。部屋にはキッチンは付いてなく、外食するしかなかったんです。メニューを見ても、ビーフストロガノフくらいしか分からない。それで毎日ビーフストロガノフを食べていました。
頼んで食べられない料理が出てきたら困る。長い時間外で1人でいるのも嫌だったので、口に合わなかったから別の料理を頼むということはしたくなかったんです。極度に疲労しているので、もう食べたくないけど食べないといけないから食べるという感じの時もありました。食事は楽しむひとときではなく、栄養補給みたいな感じでしたね。
最初に海外に長期滞在した国も、ロシアでした。牧阿佐美バレヱ団のロシア公演です。その時に、レトルトのご飯などを持って行った方がいいと言われました。それでいろいろ持って行ったんですけど、結局一切食べなかったんです。
子どもの頃から「ロシアは怖い国だ」という印象がありましたけど、いちいちひるんでいてはエネルギーを消耗します。どこでも大丈夫というようにしないと駄目だな、と。
バレエをやめてからは、料理が楽しく感じます。作るのも楽しいですし、作った物を食べるのも楽しく感じます。
最近はソースの工夫にはまっています。先日はビーガンバターにケッパーとレモン果汁をちょっと混ぜてひと煮立ちさせて、お魚のムニエルにかけたらおいしくて。お肉でも、ソースを作って一緒に食べると、なんとなくおしゃれな感じがして、楽しく食事ができます。
お野菜は、なるべくJAの野菜販売所で買うようにしています。自宅から車で行くんですが、往復1時間かけても、行ったかいがあると思える野菜がありますね。新鮮で水分量が多いような気がします。
そういう野菜を使うと、お料理も全然質が違うような気がするんです。体に良いものを食べたいという気持ちは、今でも変わりません。
(聞き手・菊地武顕)