筋肉で体重が増えた場合と脂肪で太った場合とでは、同じ体重の増え方でも体は全く違います。体形の変化によって軸の作り方も変わりますから、体形維持もすごく気にしていました。私の場合、ペア競技をやっていましたので、持ち上げてくれるパートナーの負担を少しでも軽くしたいという気持ちもありました。
私が住んでいたのはモントリオール。フランスの文化圏で、料理はおいしいんですよ。引退してから行くと、おいしいからいろんな料理をたくさん食べます。でもスケート最優先で生活をしていた当時の私は、少し抵抗感があったというか。せっかくトレーニングをしたのに、油の多い食事でカロリーを過剰摂取したらもったいない、と。ちょっと神経質な時期ではありました。そんな中で母が、頑張って料理を作ってくれたんです。その頃の食べ物の思い出は、ものすごくたくさんあります。
現地の料理にちょっと抵抗を見せる私のため、小麦粉をこねて、足で踏んでうどんを作ってくれたこともあります。うれしかったですよね。
日本の支援者が送ってくれたお米で、小さいおにぎりをたくさん作ってくれました。これがおいしくて。具で一番好きなのは、昆布。二番目が梅干し。三番目がツナマヨ。この三つがレギュラーでした。
母も同じ料理を食べていました。でもそれにプラスしてスイーツも。甘いものが好きな母は、食事の後でアップルパイをホール丸ごと食べたり、ドーナツを5個ぐらい食べたりしていました。「ナル(高橋さん)と同じものを食べているから、いい食事をしている。だから好きなだけ甘いものを食べられるわ」と言っていました。私は母が食べるのを見ても、甘いものを食べたいという気持ちは全然起きなかったです。
母は私のために、常に質のいい材料を使って料理をしてくれました。特に油には気を使ってくれたようです。母は常々言ってました。「食材よりも油の方が高い」と。その分、安心して油を使った手作り料理を食べることができました。
小さい頃からの食事のおかげで、私は食材の良い悪いがすぐ分かります。鼻についちゃうかもしれませんよね、「なんかこの塩、違う」とか言ってしまうので。私なんか、自分では作れもしないのに。
日本に帰ってきてからも、料理は母が作ってくれました。
そろそろ自立したいと思っていた時に、「みうらびとビフォアアフターSHOW海辺の町で暮らしたら、人生は変わるのか?」という、三浦半島に移住して、地元の人や仕事、食材、お店、趣味に出合うことでココロもカラダも変化してゆく、一人の女性に密着する企画のオーディションがあり、そこに応募して合格することができました。
この機会に、三浦野菜というおいしい野菜をたくさん使って自炊を頑張りたいと思います。
とはいっても、料理は勉強中とさえ言えないくらい。先日、差し入れにおにぎりを握ってみたのですが、6人分握るのに1時間半もかかってしまいました。具材を真ん中に収めようとするとおにぎりがどんどん大きくなっていってしまって。まだまだ道のりは長そうです。
(聞き手・菊地武顕)