パーティーの時は、母が大皿料理を作っていました。特に印象に残っているのが、大きな押しずし。父は富山出身で、実家に帰るたびにますずしを買ってきたんですね。家族皆、これが大好きで。そこで母は押しずし用の大きな木の器を買ってきて、自分でも作り始めたんです。酢飯を詰め、マスの代わりにスモークサーモンを載せ、さらに錦糸卵や大葉も載せるなどの工夫をして、パーティーのたびに出していました。
そういう家に育ったおかげで、私も家に人を呼んでご飯を食べるのが大好き。社会人になってからホームパーティーをやると、皆、料理をどう作ったか聞くんです。料理が好きだし人に教えるのも楽しいと感じた私は、料理の先生になりたいと思うようになりました。

フランス料理の学校を卒業して教室を開いたんですが、それに加えてイタリア料理も学びたいと思い、フィレンツェに行きました。現地では料理研究家のおばあちゃんの家に毎日通って、家庭料理や郷土料理を教えていただきました。びっくりしたのがティラミス。上にココアをまぶしているものだと思っていたら、上にパイナップルやピーチといった果物を敷き詰めるものもあったんです。いろんな種類があり、家庭によっても違うことを知りました。
フィレンツェの名物といえばTボーンステーキです。ものすごく大きな肉が大きなお皿にドーンと載って出てきて、皆でわいわい言いながら食べる。楽しく時間を過ごせます。
また、お昼になったらピタッと仕事をやめて、ワインを飲みながら昼食を楽しむ。そんな緩さもイタリア風だなと感じました。
帰国後は、フランス料理とイタリア料理を混ぜこぜにして、大皿のパーティーメニューをテーマに、教室を始めました。

でも新型コロナウイルス禍の時は、料理教室や取材撮影の仕事が少なくなりました。ちょうどその頃、息子が中学受験を目指し始めたんです。時間が空いた私は、料理で受験をサポートすることに決め、栄養学、特に分子栄養学を学びました。それを通じて、子どものやる気や集中力は食べ物で決まると知ったんです。
その知識を生かした食事に変えてみたところ、1週間でちょっと変わったかなという気づきがありました。1カ月たつと実感できるぐらい落ち着きが見られるようになり、3カ月後には模擬試験での成績が上がったんですね。無事に志望校に入ってからも、この食生活を続けていることで集中力を保てています。

一番重要なのは、朝ご飯をしっかり食べること。寝ている間にエネルギー切れになっちゃいますので、炭水化物をしっかり取る。その上でタンパク質も。ご飯とパンなら、絶対にご飯がいいですね。血糖値の上昇が緩やかです。それにパンだとバターなどを塗っただけで済ませてしまうこともありますが、ご飯なら野菜や魚・肉といったおかずも一緒に食べますから。
コロナ禍の最初の頃は家の中がギクシャクしていましたが、食事を変えたことで雰囲気も良くなりました。わいわいと楽しく食べることが大切だと思います。私の食の原点というべき実家のホームパーティーは、今でも続けられているようです。私が帰るたびに、母がスモークサーモンの押しずしを作ってくれるのもうれしいですね。
(聞き手・菊地武顕)