ドラマが終わってからも、山形の皆さまにはお世話になっているんです。毎年地元スーパー「おーばん」さんのCMをやらせていただいていまして、今でも通っているんですよ。
「おしん」の撮影は、1月の真冬、山形でのロケーションから始まりました。脱走兵の俊作あんちゃん(演じたのは中村雅俊さん)と一冬過ごすシーン。朝日町の山の深いところまで行って、極寒の中での撮影でした。スタッフさんは朝暗いうちに起きて、雪踏みをして、ロケーションの場所である山の上まで道作りをしてくれたんです。私たちはその道を30分かけて登っていって、真っ白な雪の中で撮影をしていました。
旅館で朝食を食べて山に登り、お昼まで撮影。山の上には何もないので、お昼ご飯のために一回下山しなければいけないんですよ。
下山した私たちを待っていたのは、地元のお母さんたちが作ってくれた芋煮や豚汁。雪の中から帰ってくると、ほっとしました。温かい食事でエネルギーをチャージして、山の上にまた30分かけて登って撮影するというのを繰り返しました。郷土料理のおいしさ、皆さんの心の温かさがとてもありがたく、うれしかったです。
その後に庄内地方の酒田でロケーションをしました。旅館で出していただいた朝食のお米が、ものすごくおいしかったんですね。そのご飯だけで食事になるような。さすが米どころ庄内だと思いました。
私は大学を卒業してすぐの時期に1年間、30歳の頃に2年間、山形県の広報番組でリポーターをさせていただいたことがあるんです。月に2回は山形県に通い、当時の44市町村全て巡らせていただいて、優しい山形の皆さんと触れ合いながら、施設や食べ物など山形の魅力をたっぷりご紹介させていただきました。
山形の人たちは「お帰り」「よく来たね」と、私を娘のように迎えてくださいました。
農家さんのおうちへ伺った時、少し待ち時間がありました。「ちょっと上がっていきなさい」と言われたので上がらせてもらい、取れたてのスイカやだだちゃ豆をいただいたこともあります。
食が豊かな県だと感じました。フルーツでサクランボと「ラ・フランス」は有名ですが、それだけではなくてメロン、ブドウ、スイカ、桃、リンゴもおいしい。かんきつ系以外は何でもそろっているんです。
おそばもおいしいんです。そば街道と呼ばれるおそば屋さんが集中する地域もあるんですよ。私はちょっと歯応えのある田舎そばが好きなんですけど、そんな私好みのそばを出してくれるお店も多いんです。
漬物もおいしくて。ぺそら漬け(水に漬けて色を抜いたナスを塩と唐辛子で漬けたもの)のように、東京で見ないものもたくさんあります。それとやっぱり外せないのは、牛肉。米沢の上杉鷹山記念館のレストランでしゃぶしゃぶを紹介させていただいたことがありましたが、あのとろけるような食感はいまだに忘れられません。
今の時期ですと、庄内各地で寒鱈まつりが開かれます。タラを丸ごとみそ仕立ての鍋にした寒鱈汁を振る舞ってくれるイベントです。寒鱈まつりの宣伝を見ると、冬が来たんだなという感じがしますね。
冷やしラーメン、水ご飯、だし、富貴豆……。山形の食文化は本当に豊かでおいしいものばかり。でもつつましやかな県民性のためか知られていないものも多いんです。いろいろ宣伝してこれからも山形の魅力をお伝えしていきたいと思っています。
(聞き手・菊地武顕)