実は僕はアトピー性皮膚炎を持って生まれたんですね。そのため母は、食べ物に気を使ってくれました。幸い三芳町では、コインロッカーみたいな野菜の直売所があるんです。母はそういうところで野菜を買うなど、なるべく自然な食材、体に害のない食材を選んで、調理して食べさせてくれたという思い出があります。
うちは男3兄弟で、僕は真ん中。兄とは2歳、弟とは5歳違いです。成長期の頃は、エンゲル係数がすごく高くなっていたと思うんですよ。料理も大変だったでしょうね、きっと。だから一度に大量に出せる大皿料理みたいなものを結構作ってくれてたんです。兄は割とおとなしい子だったんですが、僕と弟でおかずの争奪戦をしていました。

中でも一番思い出に残っているのが、ミートローフ。野菜もたくさん入れて作ってくれていました。おふくろの味がミートローフというのは、ちょっと不思議ですかね。
僕は10年くらい前から1人住まいを始めて自炊をするようになりましたが、母がしてくれたように野菜も良いものを求めるようにしていますし、調味料一つにしても裏のラベルを見て何が入ってるのかチェックしています。

小さい頃から良い食材を食べさせてもらったためか、今でも無意識のうちに、自分の体にとって良くないものはすぐに分かるんです。母のおかげでその部分を培ってもらったと思いますので、感謝しています。

役者は体が資本です。食べ物は自分のコンディションを整えることにつながりますので、農家の皆さんには少しでも良いものを長く提供してもらえるよう、頑張っていただきたいなという思いがありますね。
母が作ってくれた食事を思い出しながら料理をすることも多いです。何をどう加えたら、あの味になるんだろう? 記憶を基に追求する部分があります。これは音楽とも似ている部分があります。想像と試行を重ねて再現を繰り返しながら、新しい発見を得られる。そういった楽しさがありますね。
そばが好きで、よく作って食べます。市販されている十割そばは、ゆでるとドロドロになるなどなかなかうまくできないじゃないですか。でもおいしくできる十割そばを見つけたんです。それを買ってきて湯がき、その上にごまとのりを敷いて、さらに炒めた肉、タマネギ、マイタケなどを載せるんです。つけ汁にちょっとラー油を垂らすのが、味のポイントですね。卵を溶いて、その中に麺をつけて食べる。この食べ方がすごく好きで。寒い時期ならショウガも加えて体が温まるようにしたり。
元々アトピーだったということもあり、小麦はちょっと……。そのためそばを食べているんですが、他にエンドウマメ100%でできた麺を食べることもあります。

大切な舞台の前日など勝負を前にした日の料理は、肉になりますね。
実は馬肉はすごく喉にいいんです。昔、湿布がなかった時代は、馬肉を湿布代わりに当てて炎症を抑えたと聞きました。消炎作用があるんですね。馬肉を食べると、翌日はすごく声が出ます。でもなかなか手に入りにくいので、牛肉をミディアムレアで済ますことが多いですね。
無事に仕事を終えた後のご褒美飯は、とにかく白ご飯。体の疲れを取るという意味でも、お米は大切です。お米で糖分を補給するんです。大事な仕事の後というのは、かなり体力を消耗しているのでしょうね。食べてもすごくおなかがすくんですよ。白ご飯をしっかり食べて次に向かう、みたいな感じです。
(聞き手・菊地武顕)