音楽が好きだからというつながりももちろんあるんですけど、みんな何か悩みを抱えながら路上ライブに来る、という感じだったと思います。たき火に、みんなが木を持ってくる。そのように感じていました。
僕たちも、音楽の夢があるといえども、やっぱり現実を見なけりゃいけないという思いはありました。夢と現実のはざまにある、絶やしちゃいけない火みたいなものがあったような気がするんですよ、路上に。ファンの子たちも、同じようにいろいろと悩んでいたんじゃないかな。みんな、モラトリアムの中で、大人になりきれない自分というものを抱えていた。それを路上ライブというたき火に持ち寄っていた気がします。

もう一つ。かすうどんも思い出の味です。牛のホルモンをカリカリになるまで油で揚げて、うどんに入れるんですよ。路上ライブの後、地元の松原市の方でメンバー4人で食べに行きました。
その後、全国をツアーで回り、いろいろな料理を食べることができるようになりました。でも最近でいうと、松原で食べたアイガモが強く印象に残っています。

2月に、松原の市政70周年のお祝いライブをやらせてもらったんです。その後地元の創作イタリアンのお店で食事会があったんですが、そこでアイガモ土鍋が出ました。
松原の名産品の一つに、「河内鴨」と呼ばれるカモがあります。自分たちが通った中学校の裏に、「ツムラ本店」さんという店の池があり、そこで育てられていました。そのためすごく身近な存在だと感じていました。とはいっても「ツムラ本店」さんのカモはなかなか高級です。京都の料亭に卸すなど、こだわりを持つお店なんですよ。
その「河内鴨」と若ゴボウの土鍋ご飯をいただいたんです。若ゴボウというのは、やはり地元で作られる野菜で、葉から根まで全てが食べられるゴボウなんです。「河内鴨」と若ゴボウの組み合わせが、本当においしかったです。

その店で出してもらったニンジンもおいしかったですよね。松原の農園で作られたもので、蒸し焼きのように火が通されて、ものすごく甘かったんです。まるで焼き芋みたいな甘さといえばいいんでしょうか。ニンジンってこんなに甘いんだと驚きました。店のマスターが「霜が下りる1、2月は、ニンジンがすごく甘くなる時期。それで今仕入れてるんです」と説明してくれました。時期によって甘味が変わる。野菜の奥深さを、つい最近知ったわけです。
あとイチゴもおいしかった。これも松原で作られたものでした。「このイチゴは皮が薄いから、甘味がダイレクトに来るよ」と言われて食べたら、たしかにそうでした。僕はイチゴ好きで、誕生日にはメンバーがイチゴを贈ってくれるくらいなんですが、皮の厚さを意識して食べたことなんてありませんでした。これを機会に皮も意識しようと思ったくらい、味わい深かったです。

この年になると、ふるさとへの愛を感じるようになりますね。以前から「やまちゃん」の粉とだし(ソース)を東京に取り寄せて、家でたこ焼きを作っています。それに加えて、生まれ育った町のことをもっと知ってほしいという気持ちが、どんどん強くなってきました。そういう意味でも、松原のカモ、ニンジン、イチゴなどの素晴らしさを知ることができたのは、すごく良かったですね。
(聞き手・菊地武顕)