
県は全国の繭生産量の4割を占める養蚕の一大産地。同市特産の「桐生織」の起源は奈良時代といわれ、1000年以上の歴史があり、「西の西陣、東の桐生」とも称される。2008年には地域団体商標に登録された。
「ぎゅうっ」が由来
市によると、「ぎゅうてん」は絹織物業が全盛期を迎えた1930年代後半~40年代前半(昭和10~20年ごろ)に誕生したと伝わる。機織りで忙しい女性たちが、子どもや自分たちが食べる手軽なおやつやおかずとして作ったのが始まり。焼く際に、生地をへらで鉄板に「ぎゅうっ」と押し付けて両面を焼くことが名前の由来といわれる。
具材は家にある食材を使う。材料は小麦粉、水、卵を混ぜた生地に、長ネギとキャベツを加えるのが基本。ただ最近は栄養のバランスを考え、具に桜エビやチーズを用いたり、水の代わりに豆乳や牛乳を使ったりする現代風のレシピも広まっている。残った冷やご飯を加え、おやき風にアレンジする家庭もある。
お好みの食材で
地域の伝統的な食文化の継承活動などに取り組む市食生活改善推進協議会は、市のホームページや伝統料理を集めた冊子で作り方を紹介する。毎年6月に開かれる「桐生市けんこうまつり」にも作って食べる体験コーナーを設け、「ぎゅうてん」の味を守る。
同会の金子光代会長は「ぎゅうてんはホットプレートで気軽に作れる。家庭にあるさまざまな食材を加えて、子どもと一緒に楽しんでほしい」と話す。
レシピ
■材料(10枚分)
小麦粉150グラム、水1・5カップ、卵1個、キャベツ150グラム、ピザ用チーズ50グラム、桜エビ6グラム、長ネギ50グラム、食用油適量、かつお節適量、お好みソース適量
■作り方
①キャベツはざく切り、長ネギは小口切りにして、食べやすい大きさにする
②ボウルに小麦粉、水、卵を入れ、よく溶き、①とピザ用チーズ、桜エビを加えて混ぜる
③フライパンに薄く食用油をひき、②の生地(お玉1杯を目安)を小判形に広げて焼く。片面が焼けたらひっくり返し、フライ返しで強く押して焼き色を付ける
④中心まで火が通ったら完成。好みに応じて、削ったかつお節やソースをかけて食べる
[食材ヒストリー]小麦粉 貴重な米の代替食に
群馬県では、水はけの良い土壌や冬の長い日照時間、冬に吹く冷たく乾いた「からっ風」などの自然条件を生かし、県南部を中心に古くから水田の裏作として小麦が盛んに栽培されてきた。
小麦は米が貴重だった時代の代替食として、県民に広く親しまれてきた。郷土料理のうどんの一種「おきりこみ」や「ひもかわ」、「焼きまんじゅう」など、さまざまな料理が根付いている。
多様化した粉食文化に合わせ、県独自品種の「さとのそら」「つるぴかり」なども開発・育成されてきた。2021年産の収量は2万1000トンと全国有数の産地である。
一方、ここ数年は収量や栽培面積は減少傾向にある。JA全農ぐんまは「技術指導に力を入れ、品質・収量を安定させたい」(米麦特産課)と話す。
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