観光より交流や体験
「観光地を回るのは楽しいが、忙しい。日本の風景を眺め、交流を楽しみたかった」
こう話すのは、昨年12月に秋田県大館市を訪れた米国人会社員のバン・グエンさん(30)だ。3日間の滞在中、鎌を使った稲刈りやはざ掛け、脱穀といった昔ながらの農作業を体験。農家民宿「酒こし舞」に宿泊し、同市が発祥とされる、きりたんぽ鍋を楽しんだ。
テレビゲームで日本に興味を持ったバンさんは、訪日が4度目。東京や京都、大阪など人気の都市には既に足を運んでいた。今回は訪れたことのない東北に絞り、複数の米国人のブログを参考にして同市を選んだ。農作業体験ができることが決め手だったという。
「グッド!」
慣れない手付きで稲を刈るバンさんに、宿を営む山内俊隆さん(79)が声をかけた。英語はほとんど話せないが、身振り手振りや翻訳アプリでコミュニケーションを取る。きりたんぽ鍋も、英訳されたレシピを使ってバンさんと一緒に作った。
「リラックスできた。日本語をもっと勉強して、また来たい」と話すバンさん。「家族が増えたようだ。農家の日常に興味を持ってもらえてうれしい」と話す山内さん。2人をつないだのは、市やJAあきた北などでつくる大館市まるごと体験推進協議会だ。
同市の登録農家150人、農家民宿3軒に代わって、国内外から農業体験や農泊の予約を受け付ける。2022年は外国人約20人、23年は10月末までに約30人が宿泊。バンさんも、同協議会のホームページ(HP)から申し込んだ。
柿狩り「幸せ」
所変わって、山梨県南アルプス市にある観光農園・中込農園。11月下旬、親族9人で訪れたタイ人の女性、カンジャナさん(55)に目的を聞くと、満面の笑みで「柿狩りのために来た」と答えた。
日本で果物狩りといえば、イチゴやブドウなどがメジャーだ。一方、カンジャナさんによると、常夏のタイでは柿がほとんど出回らず、特別な果実。百貨店では日本産の柿を買えるが、高価で手が出ない。「日本で思う存分、柿を食べるのが幸せ」なのだという。
事実、農園にはカンジャナさん一行の楽しげな声が響いていた。女性陣は収穫した柿を顔に近づけ、スマートフォンで自撮り。親族総出で数十個、計10キロ以上もの柿を収穫した。検疫の関係でタイには持ち帰れないため、10日間の旅程中に全て食べ切るという。
カンジャナさんは、検索サイトで「柿 高品質 果物狩り」と英語で入力し、中込農園を見つけた。「HPの英語表記が正確で、信頼できそう」だったのが決め手だ。HPは前職が英語教師の園主・中込一正さん(66)が自作した。(金子祥也、高内杏奈)
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