国内の2023年産主食用米の生産量は661万トンで、当初の予想から下振れした。業務用などの安価な商品に使われる「ふるい下米」の発生量も少ない。米の流通量自体が減ったことで、国内の民間在庫量も5月時点で145万トンと過去最低水準になっている。
一方で、米の販売環境は好転している。業務用は新型コロナウイル禍からの人流回復を受けて好調が続く。家庭向けも値頃感から消費が上向き、23年9月以降の卸などの販売数量は新型コロナウイルス禍前の19年を上回るペースとなる。
在庫の不足感から卸や実需などの業者は引き取りを前倒しで進める。北関東のJA関係者は「例年より早いタイミングで米を引き取りに来る業者が多い」とし、同JAの倉庫内の米の量は前年を約2割下回る水準で推移するという。それでも、業者の在庫不足は解消されていない。
業者が産地と直接交渉をして、米を確保しようとする動きは全国で多発する。「(60キロで)2万円以上支払うから、トラック一台分(約13トン)の米を用意できないかと相談があった」(関東の産地関係者)との声もある。
ただ、既に産地の倉庫にある米のほとんどは成約済みで、新規取引に結び付くケースは限定的だ。
不足感が強まる中、24年産米の集荷競争は過熱が予想される。九州の早期米産地は7月上旬、24年産米の概算金を前年産比4、5割高となる60キロ1万9000円台を提示。JAの集荷力を高める狙いだが、商系業者が上積む動きも出ている。
今後、概算金を設定する主力産地の上げ幅がどうなるかは不透明だ。新米の出回りが進めば不足感は一定に落ち着く可能性がある。
物価高騰で消費者の節約志向は根強く、大幅な米価上昇は、消費を減退させる懸念もある。主産地のJA関係者は、「米価を上げる好機だが、どこまで消費が付いてくるかの見極めが難しい」として、需給や消費の動向を注視していく姿勢だ。
(鈴木雄太が担当しました)