自民党の「政治とカネ」の問題を追い風に、自公過半数割れを目標に掲げた立憲民主党。党本部(東京・永田町)の開票センターでは、午後8時の速報で議席数が選挙前の98を大幅に上回る見込みが伝わり、党幹部は手応えを示した。
終盤まで接戦に持ち込んだ選挙区も多く、幹部らは当初、引き締まった表情で会場入り。開票の様子を静かに見守った。
躍進の一報に、小川淳也幹事長は「(政治資金問題は)総裁選や新総裁で決してなかったことにはさせないとう有権者の強い意志を全国で感じた。自民に対する飽きや怒りと新しい勢力に対する期待感の両方を感じた」と述べた。大串博志選挙対策委員長も「物価高の中で国民生活が非常に大変な中で、裏金問題が責任も問われないと、非常に強い不満の声があった。政治を変えてくれという声の表れだ」と述べた。
野党第1党として臨んだ立民は、政治資金問題に絞った批判を一貫して続け、「政権交代こそ最大の政治改革」だと訴えた。石破茂首相の就任直後の解散で時間が限られ、候補者の一本化は進まなかったが、自民の批判票の取り込みに勢力を傾けた。
農業政策も、政策の7本柱の一つに掲げるなど重視する姿勢を見せた。旧民主党政権時代に導入された戸別所得補償制度を発展させ、米以外も含めて農地の面積に応じて交付金を出す「新たな直接支払制度」の創設を打ち出した。
野党は今回の衆院選で、「政治とカネ」問題を中心に与党批判を展開し、立憲民主党は公示前より議席の大幅増を確実にして躍進した。国民民主党、れいわ新選組も議席増が確実で、“敵失”を突き勢力を伸ばした格好だ。一方、小選挙区での候補の一本化も不調に終わり、今後、野党が結束できるか、不透明さを残している。

日本維新の会が大阪市内に設けた開票センターでは、公示前の議席を維持できるか見通せない状況に、党幹部は硬い表情を見せた。馬場伸幸代表は大阪以外の選挙区で議席が伸び悩んでいることに触れ「われわれの努力不足。国民が維新に求めていることができていないというのが最大の要因」と話した。吉村洋文共同代表は「大阪では、おかしな裏金の政治のやり方で批判されている自民党の受け皿になった」とした。
公約では政策活動費や企業・団体献金の廃止、世襲の制限などを盛り込んだ「政治改革」と、社会保障制度の見直しにより若い世代の負担を減らす「現役世代への徹底投資」を柱に訴えた。
農業分野では「抑える農政から伸ばす農政」への転換を掲げ、米の生産量を1・5倍に増やし、輸出拡大と合わせて食料安全保障を強化するとした。農地中間管理機構(農地バンク)への貸し付けにインセンティブ(動機付け)を設け、担い手への農地集約を加速させるなど、「稼げる農業」を訴えてきた。

共産党は、開票直後、比例代表東京ブロックの田村智子委員長らに当確の速報が出た一方、公示前の10議席からの上積みは微妙な情勢が伝わった。午後9時過ぎに東京都渋谷区の党本部ビル会見場に姿を見せた田村委員長は、笑顔少なに自身を含む当確者の花つけを行った。
2024年1月、党初となる女性委員長に就任し、最初の国政選挙に臨んだ田村委員長。選挙戦では「政治とカネ」の問題で自民党追及の論陣を張ってきた実績を訴えてきた。自民苦戦の報を受け、「共産党と『しんぶん赤旗』が暴いた事実が、選挙全体の状況に大きな貢献をした」と強調した。
農業政策では、食料自給率を早期に50%まで引き上げると公約に掲げた。米価下落の不安をなくし、米生産を安定させるため、需給と価格安定に国が責任を持つことを強調。ゆとりある需給計画の下で増産、備蓄を確保し、生産費に見合った価格保証と所得補償の必要性を訴えてきた。

国民民主党が東京都新宿区に設けた党開票センターでは、開票直後に公示前の7を大きく上回る議席を獲得する見込みとの報が流れ、玉木雄一郎代表らが当確者の札に花を付けて祝った。玉木代表は自身の当選確実の知らせも早々に受け、地元の支援者をオンラインでつなぎ、万歳で祝った。
玉木代表は「議席を増やすことができたならば、国民の皆さんに認められたことになり、意義のある闘いができたのではないか。緊張感を持って国政に臨んでいく」と述べた。地元・四国での比例1議席獲得の報には、「感無量」と笑顔が漏れた。
選挙戦では42人の公認候補を擁立。「手取りを増やす」「対決より解決」をスローガンに、給料・年金を上げる税制改革や家計支援などを訴えた。農業政策では、食料自給率50%の確保へ新たな直接支払制度「食料安全保障基礎支払い」を創出し、営農を続けられるだけの所得を補償するとした。