[論説]給食食材の地産地消 ブランド化が持続の鍵
東京都小平市では、JA東京むさし小平支店が直売所を集荷拠点にして、学校給食に地場産の食材を供給する。市内の小中学校の1日当たり1万5000食に対応し、米の生産がない中、給食に占める地場産の割合は金額ベースで目標の30%超えを達成した。市は地場産農産物の利用額に応じ学校に助成し、農業と教育の部署の連携が奏功した。
課題は、販路拡大によって農家所得が向上した一方、調整役のJAは、伝票処理など事務量が増えて黒字化に至っていないことだ。採算が取れなくては持続しない。事務手続きの軽労化と合わせ、地域全体の好循環につながるよう、学校給食用農産物のブランド化を仕掛けたい。
給食で使われているという事実が、地域の農家が子どもたちの健康を思って作る「おいしくて安心・安全な食材」というブランドイメージにつながる。実際、島根県の雲南市学校給食野菜生産グループは、「学校給食の野菜を買いたい」という保護者の声に応えて「私は給食野菜を作っています」というマークを作成。会員は、野菜にシールを貼ってJAの直売所に出荷し、シール付きの商品から売れていくようになった。
牛乳は、同市の木次乳業や群馬県の東毛酪農業協同組合などが低温殺菌牛乳を学校給食向けに供給する。瓶やパックのデザインが子どもの記憶に残りやすく、卒業しても買い求めるきっかけになる。
「有機給食」もブランド化の鍵となる。給食向けの有機栽培米の割合を100%にした千葉県いすみ市は、「有機農業のまち」として定着した。農水省の「みどりの食料システム戦略」推進へ、各自治体は学校給食を重要な販路として明確に位置付けるべきだ。農業者にとっても安定した売り先が見込めて、子育て世帯にもアピールできる。
子育て支援の強化へ、学校給食費の無償化に向けた議論が活発化している。物価高が直撃する家計への支援は欠かせないが、給食の食材選びの自由度が下がる懸念もある。財源が保護者が納付する私費から、税金による公費に変わることで、住民の広い理解が必要になる。費用圧縮に傾けば、割高感のある地産地消のともしびは消えてしまう。
地場産給食は足元の農業を意識し、地域への愛着を生む食農教育だ。決して後退させてはならない。