[論説]能登地震の避難長期化 災害関連死防ぐケアを
災害関連死は19日現在14人。いずれも被災後の避難中にけがや体調が悪化したとみられる。2016年の熊本地震では災害関連死が218人と、地震による直接死の4倍に上った。うち8割は3カ月以内に亡くなっている。これまでの震災を教訓に、体や心のケアと共に、ライフライン、生活環境の改善を急いでほしい。
災害時に困るのが水の確保である。特に歯磨きは、口をすすがないと不衛生となり、細菌や食べかすなどが誤って気管に入り、誤嚥(ごえん)性肺炎になりやすい。災害関連死の死因として肺炎など呼吸器系の疾患が多いだけに注意が必要だ。
自らできる口腔(こうくう)ケアとして唾液の分泌を勧めたい。唾液は歯や口の粘膜を保護したり、口の中の細菌を洗い流したりする効果があるとされる。耳下や顎下を押して唾液を出せば、日常的にケアができる。アルコールの入っていないウエットティッシュで口中を拭くのも有効だ。
同じ姿勢を余儀なくされる車中泊や混み合う避難所では、体の血行が悪くなり、血が固まりやすくなるエコノミークラス症候群になりやすい。予防には水分を取り、体を動かすことが欠かせない。足の指をグー、パー、グー、パーと動かしたり、「第二の心臓」といわれるふくらはぎをもんだり、小まめに動かそう。
時間を決めて皆で体操を行い、お互いの健康をチェックするのもいい。自宅で避難している人は、こうした情報が行き届かない恐れもある。近所で声を掛け合い、励まし合い、孤立を防ごう。
政府は、インフラの復旧や住まいの確保にはかなりの時間がかかるとして、安全な環境への移動も呼びかけ始めた。石川県の進める2次避難を「全力でバックアップする」としているが、実際に移動を希望する避難者は、まだ少ないという。
不便でも被災地にとどまるのは、住み慣れた場所や農地、地域の気心が知れた仲間と離れたくないという思いがある。また、被災地を離れたら情報が入らなくなる、家の物が盗難されるといった不安もあるだろう。
こうした不安に対して政府や行政は、情報をつなぎながら一つ一つ丁寧に説明し、対策を講じてほしい。これまでの震災から得た知恵、教訓を生かし、大切な命を守ろう。