[論説]ハーフライフル銃規制 獣害対策に支障出すな
ハーフライフル銃は、ライフル銃と共に鹿や熊などの大型獣が対象。ライフル銃の命中精度は非常に高く、射程距離が300メートル前後。一方、ハーフライフル銃も、それに次ぐ高い命中精度で150メートル前後の射程距離がある。ライフル銃を所持するには、狩猟免許を取得して10年かかるのに対し、ハーフライフル銃は初年度からすぐ所持できる。それだけにハーフライフル銃は、新人のハンターにとって獣害対策を始める上で欠かせない存在だ。
だが、警察庁が今通常国会に提出予定の銃刀法改正案はハーフライフル銃もライフル銃と同様、所持までに10年かかるよう規制を強化する。散弾銃は引き続き初年度から持てるが、対象は鳥類や小型獣で大型獣には向かない。
改正案に対し、獣害対策に取り組む現場の狩猟者からは懸念の声が上がる。エゾシカやヒグマによる農業被害に対応する北海道猟友会は「ハンターになろうとする人が激減する」と指摘する。散弾銃しか持てなければ、獣害対策に欠かせない大型獣への対応は難しい。農業現場では喫緊の課題だけに、銃の所持に10年もかけられないという。
同猟友会で、猟銃を使える「第一種会員」は現在4688人(2022年)。だが、高齢による視力低下などで毎年約270人の退会者が出る。10年後には半数以下となり、人材不足は深刻さを増す。ウクライナ危機などを受けて銃弾や火薬が高騰・不足していることも、猟友会離れを加速させている。
規制強化の影響を抑えようと、農水省は有害鳥獣駆除業務として市町村からハーフライフル銃の許可を得られる特例を検討する。だが、道内のJA関係者からは「大型獣は市町村を超えて移動する。エリア限定の許可では、獣害対策の実態に合わないのではないか」という声も上がる。
23年は熊の出没が相次ぎ、深刻な人的被害が出た。道内では、ヒグマによる飼料用トウモロコシの食害や、乳牛を襲った「OSO18」が注目を浴びた。鹿も、樹皮を剥ぎ取って弱らせ、果樹や林業への影響が大きくなっている。
ハンターの役割は年々重要になる一方、担い手確保には“赤信号”がともる。銃による事件や犯罪をなくすのは大前提だが、獣害対策の場面で迅速に銃を使える制度を強く求めたい。