[論説]始まった青果量り売り 省力化、脱プラの好機に
日本施設園芸協会は昨年12月、関東と関西の2店舗で量り売りを実証し、売れ行きや消費者の反応を調べた。
関東の店舗では、キュウリなど8品目を対象に好みの量で食べ比べができるように、ジャガイモは品種をミックスさせ、ミニトマトは色別に4種類を用意した。袋売りが定着している生シイタケの売上高は落ち込んだが、ミニトマトは複数の種類を選んで買えるため、売上高が増えた。
量り売りをした買い物客に今後の利用意向を尋ねたところ、「利用したい」「積極的に利用したい」が計9割に上り、好評だった。関西の店舗では、量り売りを実施した日の売上高は、通常の販売より微減となったが、担当者は「量り売りの潜在的な需要はある。生産者と連携したい」と手応えを感じていた。
風に飛ばされたり、投棄されたりして、各国から流出する海洋プラスチックごみの問題は深刻だ。世界経済フォーラムは、2050年には魚より海洋ごみの量が多くなると予測。海洋ごみの8割は、アジア諸国から発生しているという。子どもたちの未来を考えれば、農産物や食品包装の脱プラ化は急務だ。
また、同協会がスーパー各社に対し、量り売りについてアンケートしたところ7割が賛同した。量り売りをするため青果物の選別をなくすことについては、将来的な意向も合わせて9割が賛同した。産地の高齢化や人手不足の深刻化で、規格に応じて選別する要員確保が課題となる中、「産地の負担軽減を意識するスーパー側の意向がうかがえる」(流通研究所)という。
現在の青果物流通では、葉物野菜や果菜類を中心にプラスチックの袋や容器に入れた販売がほとんどで、厳しい規格をもとに産地が選別し、包装している。他産地と差別化できるよう独自規格を設ける一方、規格の種類が多く、生産者に負担がかかっている。
欧米では、青果物は量り売りが一般的だ。JA全中も農家の所得確保を前提に、化学農薬・肥料、温室効果ガス、プラスチックの削減へ全JAで環境調和型農業に取り組むと発表した。包装が必要な品目もあるだろうが、古くて新しい量り売りを考えたい。
高齢化が進む産地を支える上でも選別や包装の手間が省けるだけに、JAの直売所などで試してみてはどうだろうか。