[論説]農村RMOの未来 人材確保へ伴走支援を
農村RMOは農水省が育成を進めており、農家だけでなく地域住民も加わり、中山間地域の複数集落をカバーして①農地保全②農業を軸とした経済活動③生活支援――などを手がける組織と想定する。日本農業新聞は企画「農村RMOの萌芽(ほうが)」を連載、農地保全のための共同草刈りや商店運営、地元農産物を活用した特産品開発などに乗り出した組織を紹介した。
活動の底流にあるのは、住民主体によるイベントの開催や、集落の美化・清掃活動などを手がける「地域運営組織(RMO)」。取り組みを続ける中で、課題となっているのが人材不足だ。7207組織が回答した総務省の2022年度調査によると、持続的な運営の課題として、最も多く挙がったのが「活動の担い手不足」(76%)だった。次いで「役員・スタッフの高齢化」(57%)、「次のリーダー不足」(56%)と続いた。
少子高齢化の中で、集落の人材をどう確保するか。中山間地域という厳しい条件下で活動する農村RMOにとっても大きな課題だ。農村RMOの運営者からは「今の体制を維持するには、移住者が必要だ」という声が上がる。
地域の未来を託す人材を地域に呼び込むために、農村RMOが雇用創出を含めて移住の受け皿となるのか。それとも他組織と広域に連携するか。それぞれの地域にとって最適な方法があるだろう。
それを適切に判断し、実践していくには、先行事例のノウハウを共有したり、専門家の助言を参考にしたりと、政府や自治体による伴走支援が重要になる。
政府は、今国会に提出した食料・農業・農村基本法改正案に、農村振興の基本理念を追記し、農村の人口減少が進む状況の中でも「地域社会の維持」が必要だとした。農業となりわい、暮らしを支える農村RMOが、地域社会を維持する役割は大きい。組織が将来も持続していけるよう、政府が人材確保などを後押しすることは、基本法改正案と合致する。
地域に人材を呼び込む政府の施策は、農水省だけでなく、総務省の地域おこし協力隊や特定地域づくり事業協同組合、国土交通省の空き家対策など多岐にわたる。
基本法の改正を機に、省庁間の連携を一層強化し、政府一体となって農村政策を推進する体制を整えてほしい。