[論説]大型連休中の農場防疫 旅行者立ち入り警戒を
大手旅行会社のJTBがまとめたアンケートによると、今年の旅行出発日のピークは3日。日程は3泊以内が9割を占めることから今週末にかけて旅行者が急増する。農場での防疫対策を徹底しよう。
北海道では3月、牛舎などがある衛生管理区域に観光客とみられる2人が許可なく侵入し、スマホで牛の動画を撮るなどの行為が問題となった。適切な靴底消毒などをしなければ、口蹄疫(こうていえき)などのウイルスが持ち込まれてしまう恐れがある。だが農家が注意をしても2人に反省する様子はなく、今後は、立ち入り禁止の看板を目立つように設置するという。
畜舎以外にも、畑の中に入ることで病害虫を拡散させてしまう場合もある。例えば、防除が難しい線虫の一種、シストセンチュウには、10年以上も固い殻に包まれたまま土中にとどまり、宿主となる植物を待つものもある。勝手に畑に入り込めば、靴底に付いた土が原因で、他の畑に広げてしまう恐れもある。車のタイヤに付着すれば、遠くまで運ばれてしまうことになる。
新型コロナによる規制がない今年の大型連休は、遠出を企画する学生も多いはずだ。旅先の解放感から、草を食べるかわいい牛たちや美しい田園風景の中で写真を撮りたい気持ちは高まるだろう。インターネットの交流サイト(SNS)に投稿し、「いいね」の数を増やしたい若者にとってはなおさらだ。
だが、その軽い気持ちが後になって大変な事態につながりかねない。この時期、農家は、無断で農場に立ち入ってはならないことを、強く発信する必要がある。円安でインバウンド(訪日外国人)が単月で300万人を超え、日本への往来が増える中、国内で発生していない病害虫が持ち込まれる危険性もある。
特に警戒が必要なのが、有効なワクチンや治療法がないとされる「アフリカ豚熱」だ。国際線の機内では、侵入防止へ協力を求めるアナウンスが始まった。空港での掲示には、国内に畜産物を持ち込んではいけないことや、違反すれば罰則があること、靴底消毒の徹底などを求めている。
畜産農家にとどまらず全農場において、観光客が無断で立ち入れば病害虫の侵入リスクにつながる。畜舎や農場の入り口などに目立つように立て看板を設置し、病害虫から家畜や作物を守ろう。