[論説]新茶シーズン到来 若者・外国人需要が鍵
静岡茶市場は今年、1957年の開設以来、最も早い4月12日に県内産一番茶の初取引を行った。平均単価は1キロ7万7637円と、前年の同6966円を大幅に上回った。上場数量が50・8キロと例年よりも少なかったが、好調な滑り出しとなった。
2024年産の宇治新茶も、京都府和束町産の手もみ茶が1キロ20万円と過去最高を記録した。出品数は101点(952・7キロ)と、前年の31点(234キロ)を大幅に上回ったが、平均単価は1キロ1万4000円と「上々のスタートとなった」(JA全農京都)とみる。
課題は、リーフ茶の消費をどう底上げするか、だ。消費が堅調に伸びてこそ適正な価格形成につながる。総務省の家計調査(総世帯)によると、22年の1世帯当たりリーフ茶の支出金額は3263円と、過去最低となった。年間消費量も701グラムとこれも過去最低だ。
支出額は、リーフ茶と茶飲料が逆転した07年時点と比べてさらに6割も減った。一方、ペットボトルなどに入った茶飲料は07年の5802円から8001円(22年)と2199円増となり、茶飲料がリーフ茶に置き換わった。
静岡県の調べでは、若い世代ほど急須を持っていない。急須の所持率は女性の50代が60・3%と最も高く、次いで40代が46%、20代になると25・8%と減少する。20代男性は2割を下回った。ただ、この数字を悲観的に捉えるのではなく、リーフ茶を拡大する“伸びしろ”があると考えたい。若者の中には、急須で入れる緑茶を「新しい飲み物」と捉えている向きもある。
また、日本農業新聞がインバウンドを対象に、好きな日本の農畜産物について尋ねたところ、和牛に次いで緑茶と答えた人が多かった。「日本にしかない独特な風味が面白い」「本物の抹茶は日本にしかない」など外国人からも高い評価を受けた。この風を生かし、消費を底上げしたい。
JA静岡経済連や県内JAは、水筒やマイボトルに入れるティーバッグタイプの茶商品を開発した。ペットボトルを使わないため、脱プラスチックにもつながる。毎月定額料金を支払うことで自宅に茶が届くサービスも出てきた。
産地、JA、流通・小売業者、行政を上げて若者やインバウンドがリーフ茶に触れる機会を意識的につくることが、産地の生産基盤を守る。