[論説]年金制度の検証 納得できる仕組み築け
厚生労働省によると社会保障制度は、年金・医療・介護を支える社会保険、社会福祉、公的扶助、保健医療・公衆衛生からなり、国民の「安心」や生活の「安定」を支えるセーフティーネットという。
中でも老後の暮らしを支えるのが年金だ。政府は国民の生活水準や賃金、景気の動向などを踏まえ、5年ごとに年金事業の財政について収支を検証している。その作業が今夏から始まる。年金の被保険者や受給者が安定した生活を送れる配慮を求めたい。
農家らが入る第1号被保険者は、20歳から60歳までに1カ月当たり1万6980円の保険料を支払っている。もし65歳まで保険料の納付期間が延長されれば、100万円以上の負担が増すことになる。
さらに、国民年金にしか加入していなかったパートなど短時間労働者の厚生年金への加入も検討される見通しだ。厚生年金の保険料は労使折半で負担するため、従業員と事業主双方が支払う必要があり、実現した場合は、農業法人などに影響が出る可能性があり、注視が必要だ。
年金などのセーフティーネットがなければ、社会の持続的発展は見込めない。少子高齢化が進む中、将来受け取る年金額を維持するためには、一定の負担増はやむを得ない。ただ、年金制度が幾度も改正を重ねてきたため、国民にとって分かりにくい仕組みになっていないか。JAなどの年金相談会では「いつから、いくらもらえるのか」といった質問が相次いでいる。
わずかでも会社勤めをした期間があれば、国民年金の老齢基礎年金に加え、厚生年金の老齢厚生年金が支給されるため、年金支給額は個人によってまちまちだ。日本年金機構は被保険者全員に「ねんきん定期便」を毎年、誕生月に郵送している。老後の生活設計を立てるためにも、こうした情報をもっと活用し、疑問点があればその都度、問い合わせることが重要だ。
厚生労働白書によると2020年現在、全人口の3割に当たる4051万人が年金を受給する権利がある。65歳以上の高齢者世帯に関しては、収入の6割は公的年金が占め、うち5割は公的年金だけで暮らしている。高齢者の暮らしがいかに年金で支えられているかを示すものだ。
年金を支払う現役世代、受け取る高齢者ともに納得できる仕組みづくりを求めたい。