[論説]米先物取引の課題 徹底した監視と監督を
米の先物取引とは、どのような仕組みなのか。まずは農家を含め、多くの関係者が理解しなければ取引への参加もできないし、監視もできない。農家の立場で取引の手法を見てみたい。
堂島取引所によると、農家が取引に参加する場合、商品先物取引業者を通じて行う。業者は8社あるが、8月の取引開始時点で準備ができているのは4社。対面とインターネット取引の両方を行っている業者が2社、ネット専業が2社で、助言が欲しい場合は対面も行っている業者に依頼することになる。
取引は、主要銘柄の平均米価の指数で行う。取引単位は1枚3トン。手数料は業者との対面か、ネット取引かで異なる。取引に必要な証拠金も業者により違う。8月から行われるのは、来年2月が期限の2月限(ぎり)、同4月限、同6月限の取引。
農家が取引を行う場合、来年6月の現物米相場が上がる見込みがあれば、現物で売っても十分収入を確保できるため、取引の利点は乏しい。逆に下げ相場が予測されるなら、経営のリスク回避として取引を行えば、相場が下がった際に先物で収入を得られる可能性がある。ただ、需給や相場の先行きを的確に見通すことは難しく、リスクが伴うことは忘れてはならない。
例えば、来年6月限の取引で60キロ1万7000円の売りを1枚(3トン)建て、取引が成立した場合、来年6月の現物相場が1万5000円なら、60キロ当たり2000円増となり、1枚で10万円の利益を得られる仕組みだ。
米を10トン作る農家が米価下落に備えて、先物取引を行う事例も想定できる。実際の生産量を超えて100トンの先物取引を行うこともできるが、相場を読み間違えると大きな差損を生じる。これは「投機」に当たる。身の丈に合った範囲で行うことが重要だ。
先物取引は理論的には現物市場と連動するが、参加者が少ないと、十分機能しない恐れもある。取引は誰でも参加できるが、参加者をどれだけ集められるかが、先物取引の行方を左右することになる。
投機的な値動きを防ぐため、値幅や取引件数の制限があるが、先物取引が実態とかい離して乱高下すれば、米の需給調整にも影響を与えかねない。国は監視・監督を怠ってはならない。